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-仲良しハイポーション-


魔物を切り付ける瞬間トリガーを引くとガンブレードがブウン、と震えて弾丸を利用した爆発が起こる。
魔物が倒れ、動かないのを確認してガンブレードを肩に担ぐ。

15、心の中でカウントした。

そこで始めてポケットに入っていたストップウォッチが鳴り響いているのに気付いた。
時間を確認しボタンを押して音を消す。
同じようにストップウォッチを持った男がこちらによってくる。彼もガンブレードを持っていた。

「サイファー」
「時間だな。何体だ?」
「15だ」

数を伝えると苦々しくサイファーは舌打ちした。

「なんだよ…あと1体じゃねえか」
「じゃあ14体だったんだな」
「…よし、まだ時間あるし、休憩のあと…お前は時間あるよな?」
「ああ、問題ない」
「10分後に、制限時間は…あー、30分くらいか…まあいいか。30分な」
「モンスターはアルケオダイノスでいいな?」
「おう」

二人でその場で座り、どちらもガンブレードを磨く。
俺とサイファーは、ガーデンでの休日に暇を持て余し、偶然訓練施設で鉢合わせた。それからどちらが多く魔物を倒せるか、という話になりこうして時間と倒す魔物を決めてそれを実行した。
特に勝ち負けなどはなく、どちらが素早く倒し、そして狙った魔物とどれだけ効率良くエンカウントできるかというだけのものだ。

あとは、ただの競争とそれにたいする(むしろお互いに…か)負けず嫌いによって二人とも結構本気だったりする。
それも効率が良かったりするものだからただの暇つぶしにしては案外に充実しているのではないだろうか。
あ、とサイファーが声を上げた。

「スコール、お前ポーション余ってないか?」
「…ケアルは」
「ドローなんかしてたら時間無くなるだろ」

それもそうだ。自分もドローする暇はなかった。
ということは、こいつケアルをストックしていないのか。まあ、俺もだったから人のこと言えた義理ではないな。

「…何個必要だ」
「あるだけ欲しい…が、俺だって人から貰っといてそんな事は言わねえよ」
「(もう言っているようなものだろ)」
「一個か二個でいい」

実はポーションはもっておらず、ハイポーションしか持っていない。しかし余分に持ってきていたため、二つサイファーに投げた。

「ありがとよ…ってこれハイポーションじゃねえか。大丈夫なのかお前は」
「ポーションは使い切った。心配されなくても余分に余っている。」

ふーん、と興味なさそうな声を無視して時計を見る。あと2分。

そういえば学食は21時30分までだったなと思い出し、そして今は20時30分だった。
サイファーが半刻と言ったのは学食の時間に間に合うようにだったらしいとここで始めて気付いた。
育ち盛りの自分たちが夕飯抜きは堪えられないわけではないが、つらいものがある。
それと同時にどうやら長いこと訓練施設に篭っていたらしいことに今更気づく。
休日ずっと一緒にいて、多分これから学食にも一緒にサイファーといくのだと考えればはたから見たら仲良しだな、と思ったらなんて気持ち悪いことを思ったんだと後悔した。

実のところサイファーは嫌いじゃないし(かといって好きかと聞かれたら答えはNOだ)色々とちょっかいを出してくるが、逆にいえばここまで俺に関わろうとするのはこいつくらいなもので。

感謝していることもあるような…ないような。
そんなことを考えていると、お腹がぐう、と鳴った。

「……………」
「……………」
「……なんだよ」
「…保留にして、学食行くか?」

ニヤニヤしながらサイファーがこっちを見る。なんだその顔、腹が立つ。
仕方ないだろ、朝からなにも食べてないんだ。
俺だって腹は鳴る。

「………(本格的にお腹空いた…)」
「あーあ、仕方ねぇな!ほら行くぞ」

ピピピと鳴るストップウォッチを止めて、サイファーは立ち上がって歩き出した。
俺もガンブレードを担ぎ、サイファーの後を歩く。

「…なんか」
「あん?」
「あんた今日優しくて気持ち悪い」
「…………はあ?」

俺が、腕を負傷していたのに気付いたのだろう。おそらく、ハイポーションを投げたときに。

俺自身は痛みはなかったが、それも時間がたてばずきずきと痛むだろう。
心外だ、というような表情の顔をしているサイファーににやりと笑いかけたら今度は心底驚いた顔になった。まるで百面相だな。

「…お前、」
「なんだ」
「笑うことできたんだな」
「…ぶった切るぞ」

二人して騒いで学食に入ったら中で食べていたゼルに気持ち悪っ、と言われた。
俺も俺とサイファーと仲良しなんて気持ち悪いと思う。

(けど、まあ、気分は悪くない)




(110611)
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