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今日は寒い。お腹も空いた。
久しぶりにご飯が食べたいと思った。
いつもははげちゃんとか馬鹿犬とかが食えと言われるまで食べないけど。(だって面倒くさい)

目の前におでんがあったら買ってしまうだろう。
零さないように持つのが面倒だったけどどうせなら冷える前に食べたい。
神羅ビルに急いだ。

食欲があるのは仕事では邪魔にしかならないが(仕事中に腹減るのはかっこわるすぎ)仕事が終わった今それもいいじゃないか。
なんか今日俺キャラちげぇ、と舌を出す。仕方ない。こんなに寒いから。

自分のデスクに席を着く。報告書なんてあとだ。
俺がおでん買ってるなんて自分でさえ奇妙だから変な目で見られると思ったが、今は誰もいない。

テキトーに入れてもらったおでんを見ると、最初に目に入ったのは煮込まれた茶色のたまご。
サングラスでも書きたいくらい似てる。
とりあえず携帯で写真を撮って本物のグラサンにメールする。


件名:
>>早く来ないと 食べちゃうぞ


今日は相当キてるらしい。
クックックと笑いがこぼれる。
メールの相手は、相棒のくせに珍しく俺と一緒の任務じゃなかった。
それほど人手不足ってか。
俺のほうはたまたま早く終わっただけで、あっちは多分まだ仕事中だ。
メールを見てるかさえわからない。

たまごを器用に割り箸で掴んで口にほうり込む。
うん、まだあったけぇ。

煮込まれたルードは結構美味しかった。
と意味不明なことを考えてると、後ろのほうでドアが開いた音がした。
誰か帰ってきたらしい。

「レノ、ここだったか」
「は…え?」

予想外の声に振り向く。

「ルード…あんた、仕事、」
「今終わった」

帰ってくるなんて思ってなかった。
というか、帰ってこない前提だったのださっきのメールは。

「…そ、」

無性に恥ずかしくなってそっぽ向く。

「…レノ、さっきのメールはなんだ」

さっきのメール。あぁ、さっきのメールね。
と言ってみるが答えなんてない。なんで送ったのかも自分でさえわからないのだから。

「おでん、買い過ぎた、から」

いつもはすらすら出てくる言葉が今日はおぼつかない。
やっぱり変だな今日は。
ちょっと離れてただけで久しぶりにあった気がする。俺でも、少し寂し…いや、ありえない。

「俺、キモ」
「?」
「だから、えーっと、食べきれないし勿体ないから呼んだんだぞ、と」

乱暴にこんにゃくを突き刺す。
もうぬるくなってる。

「そうか」

ルードが隣に座る。
それがなんだかしっくりくる。
親なんて顔も知らないが俺も所詮人の子らしい。
認める、認めるさ。
いつもは隣にいるこいつがいなくて俺だって多分ちょっと寂しかったんだ仕方ないだろほとんど一緒なんだからああもうクソ。

「キャラ違ぇっつの…」
「レノ?」

不本意にも、こいつの隣が一番安心するんだ。





赤猫の苦悩
(さびしがりやな、かわいいのらねこ)




(110611)
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