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※召喚!



-Trigger-



白い羽が暗い闇へと染まっていた。
彼女の顔にはいつもの無邪気な笑顔はなくて引きつったような、苦しそうな、泣きそうな…笑顔の仮面が貼りついていた。
少しだけ残った白い羽だけが彼女がまだ心を闇に出来ていないことだけがわかる。
久々にあった彼女―リノアはただそこに魔女のように君臨しているかのように佇んでいた。

「…スコール」

小さく、消え入りそうな声でリノアは俺の名前を呼ぶ。

美しく、透き通る彼女の声が震えて消えた。

いつもは、ずっと聞いていたいはずのその音は、耳をふさいで、目を閉じて、聞きたくないと叫びたくなった。

風が彼女の艶やかな黒髪を揺らし、切なく笑うその笑顔ごと連れていかれそうな錯覚を起こし、思わず右手がピクンと動いた。
息をしているのも忘れてしまいそうだった。

「スコール、スコ、…ル」
「…………、……」
「わたし、わたし、ね?あなたと初めて会ったよね?でも、スコール。あなたを知ってる。だって、こんなに…胸がきゅーんとなるの」

ふ、と小さく笑って、リノアは黒い瞳を真っ直ぐ俺に向けた。
カチャ、と銀に光るガンブレードが音を鳴らす。

「でも、」
「…俺たちは今は敵だ」
「そう、だから、せめて」

黒い羽が俺の真横に舞い降りる。
まるでそれが合図のように。

「楽しもう、スコール。ジェクトさんたちみたいに」
「そうだな。でも、俺が勝つ。約束を守るために、あんたとの約束を、守るために。」
「うん…待ってる…好きだよスコール」
「…ああ、俺もだ」

リノアの唇が詠唱を唱え呪文を描く。
トリガーを引いたガンブレードを構え、俺は地面を蹴った。





-end.-



「……なーんてことになったらちょっとかっこいいよね!」

パシャ、と彼女がステップを踏むたびに光を帯びた水が跳ねる。
振り返る仕草で彼女の長い黒髪がふわりと舞った。

「…それは、あんたがカオス側だったらということか」
「えー、違いますぅー。スコールがカオスなの」

目を細めて笑う彼女の口が紡ぎだす、もしもの物語。
それはただの創作で、ただの創造で、ただの幻想であるはずだった。

「でもこういうのはヒロインが敵!みたいなのが鉄板かな?」
「ヒロイン…」

それじゃあ、ヒーローは、と言いかけて口を閉じる。言わずとも答えは知れていたし、まだ歌うような声を途切れさせたくなかった。
何か言いたげな彼女の瞳と視線が交わった。
その時とある光景と彼女がダブって心臓が捕まれたみたいに息が吐き出せなくなる。
自分は秩序で、彼女も、秩序のはず、だった。
記憶がえぐり出される感覚に思わず拳を握りしめて、ただ一緒にいたいと願った彼女の笑顔をなに知らぬ顔で受け止める。

それはただの創作で、ただの創造で、ただの幻想であるはずだった。

ならダブって見えたのは、自分が生み出した想像か、それとも。

「スコール、また眉間にしわよってるよ。あ、いつものことか」

俺はただその汚れない笑みを守りたいだけだった。




存在無き幻想。終わった過去。それとも―――






(110611)
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