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※召喚!



パシャ、と水がはねる。
風の音さえないこの場所で、自身の発する音だけが静かに響いていく。
まだ空は薄暗い。
金色の自分の髪が、月に照らされ光を反射していた。
朝というには早過ぎるこの時間に、一人になるのは危険だとわかっている。
わかっていても、時々、こうして一人なりたいと思うときがあった。
皆といる賑やかな時間が好きだ。
でも、こうして一人静かに過ごす時間もまた、好きだった。

歩みを止め、適当な岩に腰掛ける。
これといってやることあるわけでも、考えたいことがあるわけでもない。

ただじっと、闇が光に包まれる鮮やかな夜明けの空を見つめていた。
静かだった。
自分の心臓の小さな音が響いているのではないかと思うくらいに。
緩やかに彩りが変わる空だけが、時が刻まれているのだと示すように。
目線を上から下へと移動させる。
自身の影がうっすらと映っている。
日が少しずつ上がっているらしい。

「……ん?」

影が上のほうにどんどん大きくなっていく。まるで、もう一人(もしくは一つ)が自分の頭上にいるみたいに。
そう思った瞬間素早く後ろに飛び退いた。
それと同時に、何者かが先程自分がいた場所…岩の上に落ちてきた。
ぐえ、と呟いた後、何者かは動かなくなった。

「……?」

背中にあるバスターソードに手をかけ、戦闘体制に入ったものの、相手が動かないのではこの反射的行動も無意味だ。
まだ動かない。いや、動けないのだろうか。もしかして、死んだか?

バスターソードに手をかけながらゆっくり近寄る。
もし相手が敵だったら迂闊な行動なのはわかっていたが、敵とは思えないという証拠のない確信が俺にはあった。

近づいてわかった。
俺と同じ…ソルジャーの服をしていた。

「……おい!」

遠くから声をかけると、そいつはピクリと動いた(ような気がした)。
まさか、
まさか。
いや、…でも。
ある人物の顔が頭に浮かぶ。
ソルジャーなんて、そうそういない。
それも、1stの制服なんて。

がばっと勢いよく顔をあげたそいつは

「…ザックス?」

親友に良く似た姿だった。





絶句していた俺は気づかなかったが、ザックスに良く似た人物は暫く周りを見渡すと、俺を見て近づいてきていたたらしい。
ああ…見れば見るほど似ている。
俺はもしかして幻覚を見ているのか。
黒い髪を後ろにして前髪がピョンと少しだけ跳ねてるのが可愛い…あれ、こいつ似てるんじゃなくて本物かもしれない。

「おーい、もしかしてクラウドか!?」

声も似てる…ん?今、俺の名前を呼んだのか?
ふらつきそうになる足を必死に地面に押し付ける。

「…ザック、ス…?」
「ああ良かった、誰もいないと思ったからなあ。いきなり落ちるし」
「…本物?ザックス、本当に…?」

信じられなくて、いや、信じたいけどもしかしたら敵の誰かが幻影を見せているだけかもしれないしもしそうだったらちょっとでも信じたら負けな気がするしそれより何より悲しいだろどうせなら本物が敵のほうがいいザックス!

「…クラウド?」
「うう…」
「…?ああそういえば、コスモスっていう女の人に喚ばれたんだけど」
「コスモス?」
「なんか貴方は光の戦士とかなんとか。クラウドもそうなんだよな?」

コスモス…コスモス。コスモスが喚んだのか、ザックスを、こっち側に。
じゃあ、本物?

「ちょ、なんで泣くんだ!?」
「う…ザックス」

わたわたと慌てるザックスを確かめるようにぺたぺたと触る。
ついでに言うと俺は泣いていない。涙目かもしれないが。

体温がある、感触がある。
心臓が動いている。

何も言わず肩に頭を乗せるようにしてもたれた俺を、ザックスは仕方ないなといいながら髪の毛をくしゃくしゃにした。

ああ…ザックスだ。

夜明けから朝になり青く澄んだ空気が風となり穏やかに流れていく。
眠っていた世界が目を覚ます。

「おーい、クラウドー」

遠くから聞こえるバッツの声に、仲間たちにどうやってザックスを紹介しようか、と苦笑しながら思った。





光は交差する
(そして輝きを増していく)


(110611)
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