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※現代パロ


-幼なじみというものは-



朝のホームルーム、アンジール先生の口から出た日付が俺の右から左へと流れていた耳に一瞬止まった。
それが脳まで到達して弾けた。

「まじか!」
「うわっ、どうしたんスかジタン」

後ろの席のティーダが発した吃驚した声がしたがそんなのは無視だ。
はい!と行儀良く手を上げて、ついでに先生質問です、と言っておいた。

「どうした?」
「先生、今日は何日ですか!」
「9月21日だ」
「試験はいつですか」
「さっき言ったぞジタン。9月23日からだな」

へなへなと力の抜けた俺の手がさがる。
迂闊だった、夏休み気分が抜けなかったせいで学校に通っているのに日付感覚が狂っていたらしい。
試験なんてまだまだと思っていた週末の俺!貴重な時間を20歳児と一緒に過ごしてしまっていたなんて。
がっくりと項垂れる俺の髪がちょいちょいと引っ張られる。

「なーんでそんなに落ち込んでるんスか」
「お前…明後日だぞ?試験だぞ?俺なんも手ぇつけてないんだぞ?」
「へぇ、意外っス。ジタンちゃんと勉強してたんだな」
「だって、良く考えてみろよティーダ。成績悪すぎると、女の子にモテないだろ」
「…はあ。」
「ちょっとお馬鹿なほうが女子に可愛がられるが、まじの馬鹿は笑えない」

ティーダは俺の力説に納得がいかないのか、良くわからないのか首を傾げていた。頭の周りにハテナマークが浮かんでいそうだ。
ちょっとお馬鹿で女子に可愛がられる、はお前のことなんだけどな、ティーダ。
ブリッツボールのプロでエースなのもあるけれど。
女子にというか年上に可愛がられるような気もするが、とにかく成績悪すぎるのは良くない。

「やばいな、どうしよう」

正直そこまで心配していないけれど、流石に何もしていないと思うとやっぱり不安だ。
アンジール先生が試験日の時間割を黒板に書いてくれた後、ホームルームは終了となった。一番上にはキレイな文字で英語と書かれていた。
うわ、一番最初が英語かよ。

「じゃあ、勉強会でもするッスか?」

俺の独り言を聞いていたらしいティーダが落書きいっぱいのノートを広げて言った。お前ホームルーム中に何してんだよ。

「ジタンの後ろ姿」
「…意外に上手いじゃん。じゃなくて、勉強会かー、俺とお前で?」
「そんなの絶対勉強進まないだろ」
「だよなー。そういえば、ティーダはいつもどうやって勉強してるんだ?」

こんなお馬鹿なティーダだが、成績はそんなに悪くない。すごく良いわけでもないが、授業をあまり真面目に聞かないにしてはそこそこの点数だった。

「ん?オレはフリオニールに教えて貰ってるッスよ。」
「フリオニール…って、ああ、一学年先輩の?」
「そうッスよ、気合いが入ると意外とスパルタなんだよなー。あ、そうだ、フリオニール呼べばいいじゃん。なあ、フリオ呼んで勉強会しようぜ」
「いいけどさあ、フリオニール先輩も試験なんじゃないか?俺たちといたら勉強出来ないんじゃ、」

と、ここまでいいかけてやめた。全部言っているようなものだけど。
毎回ティーダに付き合っているなら今回のことも多分想定外じゃないはずだ。
このちょっとお馬鹿なティーダの点数をあげれる人だ、頭も良くて教えて上手かもしれない。
ティーダが随分慕っているのは前から知っているし、会って話したことはないけどきっといい人だ。

「まあいいけどさ。場所どうすんだ?俺の家はクジャが怒るからな」
「うーん…オレの部屋もちょっと…今日、オヤジがさ…んー。」
「無難に図書館かー」
「ん、お?ジタン、いい案浮かんだッス。」
「おっ、言ってみな」
「スコールの家はどうッスか。すげー豪邸だし」

確かにスコールの屋敷ともいえる大豪邸は中が迷路と思うくらいには広い。まあ、それは誇張した言い方だけどそのくらいだだっ広い。
スコールと父親しか住んでいないらしいから、どちらかの趣味なのかあまり金持ちっぷりを示す置物が存在しないからなのか、居心地が良かったりする。
ただ絵は多いけどな。

「願ってもないけど、とりあえず本人に、」
「スコール!今日家行っていいッスかあ!いいッスよねー!」

いきなりティーダが教室の騒がしさに負けない大声で窓際にいるスコールに呼び掛けた。
近くに行って聞けばいいのになあ、と思う反面、わかってやってんのか?とも考えた。
ティーダが大声で言わないと聞こえない距離に居るスコールが、否定肯定どちらにしても、するには同じように声を出さないといけない。
スコールがこういうことで大声を出すなんて考えられないし、否定するにも余程の理由がないとここまで来たりしないと思う。
だから押しきる。

ティーダとスコールは幼なじみらしいから、まあいつもこんな感じだ。まあ、スコールも断らないし(断るならきっぱり言うしな)意外といい関係かもしれない。

とりあえず俺もティーダに加勢した。

「勉強会するからなー!」
「フリオニールも連れて行くッスー!」

額に手を当ててため息を付いたスコールに、ティーダと二人顔を見合わせて笑った。



(110611)
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