君は−−−…
ノイズの混じる声。
何かに遮られているように断片的に届く音。
君は−−−…、なんだ−−水に潜っているみたいに意識がゆらゆらと揺れる。
誰かが何かを言っている。
俺に言っているのか。
音なのか言葉なのか、俺にはわからない
君は−−−の、夢…なんだ−−そんなの、夢の中で言われても説得力ないっつーの。
かばっ、と勢い良く起きる。
暑いわけじゃないのに体は汗だくだ。
そんなに怖い夢を見たわけじゃないのに。
テントの中にはスコールがいない。
外へ出ると見張りのジタンが座ったまま、膝を抱えて寝ていた。
夜風にあたりながら、近くの湖へ足を伸ばす。
−−夢なんだ
夢の中と同じ声が頭に響く。
なんのことだよ。
声に出してもこたえは返ってこない。
男の声か、女の声か。
そのどちらにも聞こえる声が不気味だ。
それは、尖った何かを胸に突き刺されたような感覚に陥る。
これは、俺の世界の…?
聞き覚えのない声、
聞き覚えのない言葉。
俺は誰かに言われたのだろうか。
いつしか声は声でなくなり、頭の中で文字として浮かび上がった。
きみは のゆめなんだ色褪せた紙みたいに、途中の空白がくすんで見えない。
空白の部分から、破れていく。
−まだ、まだだ。
思い出すときじゃない。−−頭ではなく今度は心で感じる。
なんだよ、俺の中で勝手に会話しやがって。
どこの誰だか知らないが、俺は夢だろうがなんだろうが俺は俺だ。
みえてきた湖に走ってそのまま飛び込む。もう変な声は聞こえない。
意味のわからない文字は溶けて消えた。
深く潜り勢い良く水から顔を出す。
無性に叫びたくなった。
「これは俺の物語だ!!邪魔すんなああ!!!」
俺の声が世界を震わせた気がした。
潜る、沈む、そして夢想は叫ぶ
(夢想は惑わされようとも自身を貫く)
(110611)