Main

Start++


-耐性マイナス100-



「うーん」

先程から魔法を出しては首を傾げ、そしてまた魔法を出す。それをバッツは飽きもせず続けていた。
いいなあ魔法出来るやつは。そんなことを思いながらそんなバッツを見つめていた。バッツは何をしているんだろうか。

「あー、やっぱダメか」
「…なあ、さっきからバッツ何してんの?」
「あ、聞いてくれよジタン!」

中途半端な冷気魔法が無残にも砕け散った。しかしバッツはそんなことは気にせず座っている俺のところに歩いてきた。

聞いてくれ、と言ってるわりにはこちらの返答も聞くことなく喋るやつだから返事はしなかった。いつかは別に聞きたくない、と言ってみたいと思う。思うだけ。実際俺だって聞きたくないわけじゃないから。
バッツは俺の隣にどかっと座って大きなため息をついた。

「俺さあ、まだ自分の世界のこと思い出せてないんだ」
「まあ、皆そんなもんだろ」
「そうだけどさ、魔法くらいは思い出したくて」

そうか、だからバッツはずっと魔法連発していたのか。先程の奇怪な行動が少しわかった。

「皆の話聞いても世界によって同じ名前の同じ魔法も、逆にその世界だけの魔法とかあるだろ?」

たしかにそうだ。俺の世界では水系魔法はウォータしかなかったのがティーダの世界ではガ系まであるらしい。どんだけ強いんだ。
ファイアやブリザドは、記憶が全くないウォーリアは別として共通ではあった。

「俺の世界だけの魔法とかないのかな、とか思って」

思い出さないと物まねもできないだろ、とバッツは言った。
そんなものだろうか。どっちにしろ俺は魔法使えないけどな!属性攻撃が限界だ俺にはと勝手に卑屈になる。顔にはださないけど。

「それでさ、ジタンの世界にはバニシュ、ってのがあるんだろ?」
「まー、俺が使えたわけじゃないけど、姿を消してさ、モンスターはこっちの姿見えないから物理攻撃は受けないんだ」

持続時間は短いけど、とは言わないことにした。どうやら俺の世界はサポート魔法の持続時間が半端なく短いらしいというのは皆の話、というかティーダの話を聞いてわかったことだ。

「それって一部だけ消すとか出来るんだろ?」
「多分。クジャとかはそれで…えーと、隠してるんじゃないかな」

俺とクジャは兄弟のようなもの、と言ってあるから気付いているとは思うが、クジャ自身がそれを許せなくて隠しているのだから一応何を、というのは濁した。
そもそも尻尾をバニシュで隠しているのかは定かじゃない。俺には魔法効果を目で見れるほど耐性はない。

「ふーん…いいなあ、俺もバニシュ使いたいな」
「なんでだよ」
「いや、だってさ」

バッツがちらと俺を見てまた前を見た。
あ、ちょっとわかった気がした。

「ジタンの服一瞬で消せるじゃん」
「うわ、くっだらねえ」
「くだらなくない!」

いや、くだらないって。
そんでもって直前に俺が思ったことと一緒じゃん。
そんなことのために必死で魔法連発してたのか。くだらなさすぎる。

「別に見えないからって、無くなったわけじゃねーぞ」
「え、じゃあ素肌に触れないってことか?」

ほんとこいつはこんなことしか考えてないのか。

「それに、別に魔法で消さなくたって……うん」
「そうか、俺が脱がせばいいんだな!」
「え、違…わないけど、お前なあ…」

今度は俺がため息をついた。
なんてデリカシーのない奴だ。
そういうとこも、実は好きだったりするのは墓まで持って行くって決めたから口には出さないけど。

横からぬっと手が上着の服に入る。

「なあ、ジタン」
「なに」
「脱がしていい?」
「もう脱がそうとしてるだろ」

そうだけどさ、と言うバッツの息を首もとに感じて思わず身震いした。
ここは外だとか、お前さっきまで練習してたんじゃないかとか、言いたいことは沢山あったが、言葉になる前にバッツに飲み込まれるように口を塞がれてそれは叶わなかった。

俺は魔法よりも、バッツに耐性を持ったほうがいいんじゃないかと本気で思った瞬間だった。




(110611)
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -