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-秘訣はムーブアクション-



うわあ、と隣にいるティーダが歓喜の声をあげた。
ティーダの視線の先には、黒い…なんだろう、機械…?らしきものが何故か星の体内の真ん中にその存在感をありありとさらけ出しながら居座っていた。
とりあえずなにか凄いものなんだろう、フリオニールはティーダの様子を見てそう思った。

「かっけぇ〜!」
「あ、こら!ティーダ!」

罠があるかもしれないだろう、と言おうとしたフリオニールよりも早くティーダは機械に走っていった。
その物体が爆発してもしらないぞ。
一応自分だけは遠くから見守っていたが、ティーダがベタベタ触っているところを見ると、どうやら罠ではなさそうだ。

罠だったら非常に困るのだが。

「うおー!すげー」
「ティーダ、これはなんだ?」

ティーダと一緒に黒い物体を触っていたが、車輪が付いているので何かを運ぶものかと思ったが、形に見覚えがない。
文明の発達した世界らしいティーダがわかるということは俺にわからなくて当然というば当然だが。

「バイクッスよバイク」
「ばいく?」
「えーと、車は四輪車だろ?」
「くるま?」
「…自動で動く荷台ッス」
「へえ、それは凄いな」

荷台にしては物を乗せる場所がないような気がするが、もしかしたら人間がまたがって動く機械なのかもしれない。
移動手段ということだろうか。
しばらく二人で触ったり眺めたりたたいたりしていると、後ろから声がした。

「二人とも、なにをしているんだ?」
「あれ、見慣れないものがあるね」

クラウドとセシルがこちらを不思議そうに見つめながら歩み寄ってきた。

「クラウド、セシル、バイクっスよ!」
「バイク?」
「…バイク…あっ」

頭にクエスチョンマークを浮かべたセシルとは違い、クラウドはこの…バイクとやらを見た瞬間目を輝かした。

「フェンリル…なんでこんなところに」

バイクをフェンリルと呼び、懐かしそうにクラウドはバイクを見つめる。
そしていきなりがちゃがちゃと音を鳴らしながら色んなところを外したり付けたりしていた。

「え、クラウド、何を…」
「ああ、動かせるみたいだ」

驚いて声をかけると、どうやら微調整やらの確認だったらしい。
ティーダを見ると、こちらもキラキラと輝かんばかりの瞳をクラウドの手元に向けていた。

「クラウドの世界の機械なのかな」
「多分。名前も呼んでたし」
「ク、クラウド、俺も触らして欲しいッス!」
「ダメだ」

きっぱりと拒絶され、しょんぼりとうなだれるティーダをセシルがぽんぽんと叩く。

「これは、俺の世界でも珍しい…というか、高いし扱いが難しいんだ。」
「高いのか…」
「そこに反応するのかよ」

今だうなだれていたティーダが顔を上げた。

「でも、動くんだろ?乗せて!後ろでいいから」
「それはかまわないが…」
「よっしゃ!」
「僕も乗ってみたいなあ」
「え、じゃあ俺も」

セシルと俺が便乗して言うと、クラウドは仕方ないなというふうに笑った。
相当愛着があるのか、バイクを触るときもどこか丁寧だ。

クラウドの隣で待ちきれないというように歩き回るティーダに苦笑していたが、周りを見回していたセシルがうーんと唸ったのに気づいて声をかけた。

「どうした、セシル」
「いや、あのね…」

もう一度セシルは周りを見渡す。

「どこで乗るのかな、って」

ここは星の体内。
バイク…フェンリルがあったのはその真ん中だ。
俺達が立っている場所は、面積が広いわけではない。むしろ狭い。
移動手段であるのなら、ここで乗ったところでたかがしれてる…な。

「…移動しようにも、担いで…か?」
「そういうことになるよね、多分、ここでは無理だよね?クラウド」
「…スピードが速いから、すぐ落ちるな」
「え、じゃあ乗れないの?」
「…気合いで担ぐ」
「それは…」

無理…だろう。いくらクラウドが見た目より半端ない力の持ち主でも、こんな重そうなバイクを担いでなおかつジャンプするのは至難の技だ。

「くっ、こういうとき、魔法が使えたら…っ」

クラウドが心底悔しそうに吐き捨てる。
この世界では、元の世界で使えた魔法を使えなかったり制限されている者もいて、俺達ではこれを持ち上げる魔法は使えない。

「…じゃあ、仕方ないね」
「俺乗りたかった…」

残念そうに二人がクラウドを見つめる。
クラウドはしばらく無言だったが、ちょっとまってろ、と言い残しどこかへ消えた。
取り残された俺達は呆然としながらそのまま1分ほど過ぎたあと、アナザーに着替えたクラウドが現れた。あの目は、やる気だ。

「クラウド、まさか…っ」
「やるんスね、クラウド」
「ああ」

クラウドを見つめるセシルとティーダの目がもう英雄を見る目だった。
俺には、止められそうにない。

「担ぐのが無理なら、フェンリルに頑張ってもらうしかない」

三人の周囲だけ異様な雰囲気に包まれながら、クラウドはバイクにまたがった。
セシルとティーダが真剣に見つめる。
ちょっと雰囲気についていけない俺は少し後ろに下がって見つめていた。誰か止めてくれないか、暴走しそうな三人を。

「限界を超える…っ!!」

アクセルを踏み込みクラウドを乗せたフェンリルは動き出し、スピードを上げ、そのまま、落ちた。

「……………」
「……………」
「…クラウドー帰ってこーい」

ああクラウド、君は英雄だった。

「勝手に殺すな」
「クラウド!」

下に落ちたと思われたクラウドはフェンリルとともに上にいた。
急いでクラウドのもとにジャンプする。

「クラウド、無事だったんだな!」
「よかった…デジョンされて帰ってこないかと…」
「クラウドーよかったあー」

皆で勢いに任せてクラウドに抱き着く。
三人の重みを一心に受けたクラウドは少しよろめいただけで、俺達を受け止めた。
奇跡の生還みたいな皆のテンションに、たまにはこんなのも悪くないなと思った。




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