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-紅の代価-



「あ」

思わず声が出た。
一個足りない。素材入れ袋の中を探してみても、目当てのものは見付からない。
デュエルコロシアムの帰りで、色々整理せずに突っ込んだから中はぐちゃぐちゃだ。非常に気にはなるが仕方ないと我慢する。

ショップの前で俺は立ちすくんでいた。
これじゃなんのために素材集めをしていたかわからない。
また戻ろうか。いや、たかが一個のためにか?それはない。
一人自問自答を繰り返していると、隣に人の気配がした。

「スコール、どうしたんだ」
「…クラウド」

俺の隣に並んだクラウドは、服や顔が少しながら汚れていてた。クラウドもコロシアム帰りらしい。

「なんだか挙動不審だった」

失礼だな、と思ったがクラウドが可笑しそうに微笑んだので言葉を飲み込んだ。
本当に、男のくせに綺麗に微笑うやつだ。

「…一個素材が足りなくて」
「ん?そんなことか。何が足りないんだ?」
「ルビー、が」

あったかな、と呟きながらクラウドは自分の素材袋を覗き込み手を入れた。

「一個でいいのか?」
「ああ、すまない」

赤く光る宝石を受け取る。
これからトレードして、その装備をクラウドにあげようと思ってたのに素材を一個本人から譲り受けるとは。
でも本人がいるんだ。丁度いい。
ショップには人がいないから、トレードする装備をコンピューターのタッチパネルで選び、必要な素材をコンピューターの穴…らしきものから入れる。
数秒後、素材を入れた場所から装備が出て来る。
最初は中に人でもいるのかと探ったりもしたが、どうやら人気はない。
どうせ異世界だ、意味のわからないものがあっても危害は加えないしむしろ助かっているのだから気にしないことにした。

トレードを連続で後三回行う。

「…ライズが」
「ん?」
「どうしてもライズ出来ないやつがあるんだ」

同じくトレードをしていたクラウドはいきなり喋りだした俺にきょとんとした。
そんな顔をすると幼くみえるぞ、と本人には言わず飲み込んだ。

「どんなに運を上げても、サンライズやムーンライズをつけても、ライズできない」
「…へえ」
「だから、手伝ってくれないか?」
「別にかまわないが、…?」

今さっき手に入れた装備を4つ全てクラウドに持たせた。やっとこれでライズ出来るだろう。

「今日でなくてもいいし、急ぎじゃないから思い出したときでいい」
「わかった、けど、これは…?」
「クラウドがよかったら貰ってくれ」
「え、あ、ありがとう。」

まだ袋に包まれた装備を両手に抱えながらクラウドは不思議そうにこちらを見る。

「そのときはそれが役立つと思う」
「わかった」

踵を返し、皆のいる秩序の聖域へと戻る。
その途中で何をライズしたかったのか言うのを忘れていたことに気がついたが、また後で会えるだろうし、問題ではないだろう。

それよりも、クラウドはあれを使ってくれるだろうか。
まさかクラウドが装備できるなんて知らなかった。
効率を考えれば、きっと使ってくれるだろう。


いわゆる、…女装セットを。





(110611)
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