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-彼らはたしかにそこにいた-



見えるものと見えないものが交差する僅かな隙間が霧がかかったようにぼやけて消えていく。

鎖が頑丈に隠して見えない奥がまだ知るべき時ではないと拒絶しているようにも見えるし俺自身が見たくないという深層心理がそうさせているのかもしれない。

手を伸ばしても届かないそこは近いのか遠いのかもわからなくてただただそこに存在するだけのもののようだ。

届かなくても見えなくても確かに存在するそれはいつか俺が知る真実を今か今かと待ち受けているようで。

まるで胎児を宿した母親のように波を不規則に流す感触を受け止めああ俺は今水中にいるんだと今更ながらに認識した。

認識すれば不思議なもので周りは綺麗なあおに染まって俺は内側を見るのをやめて現実へと目を向けたがはたしてそこは幻想なのだとしても俺はわからないだろう。

光の戦士たちと共に闘ったあの日々は幻想でもなく夢でもない確信が俺にはあってその記憶が薄れないことを願うことしかできない。

最初の旅とはまた違った運命に引きずられながら戻ってきたこの世界も本当は少し違うけどここが自分の帰る場所なのだといってくれているようで。

もう会えない人達と会えないと思っていた人達に俺は支えられてここまできていることはちゃんと理解している。

起きろ起きろと水がうねっていつのまにかもやもやとした霧はなくなり鎖などとうに朽ちたようにその身を無へと還したのを見てもうそのときには俺は水上へと体を動かしていた。



することは、一つ。
会いたいあの子に。


色んなことがあったんだ。
忘れたくない色んなこと。


君と話すんだ。
今までのこと。


話したいんだ、君と。
君とあの世界のこと。


口笛で呼んでよ。
口笛で返すから。


口笛で呼ぶから。
口笛で返してよ。




海を抜けるとそこは真っ青な空と眩しい太陽とこれから始まる予感に口笛を吹いた。



(110611)
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