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-それは交差する-



伸ばされた手を払う。
ちがう、
ちがう。
そんなことしてほしくなかった。

「ティーダ…お前のせいじゃない」

そう言うフリオニールの手は、フリオニール自身の血であかく染まっていた。

「でも、フリオニール…俺を庇って、」

ばかだな、俺なんか庇って。
俺は俺が傷つくよりことなんかよりずっと、フリオニールが傷つくのが嫌なのに。

「たいしたこと、ないから」

たいしたことなくても、怪我、したんだ。俺の代わりに。
俺が、俺がもっとちゃんとしていれば。
弱いイミテーションだった。
俺の姿をした。
油断しなければ、無傷で倒せた。
背後から迫ってきていたのを気づかなくて、反応が遅れた俺を庇って、フリオニールは…。
傷は浅いが、血はどばどばと流れていて。

「大丈夫だ、ティーダ。お前のせいじゃない」
「…っ、」

なんで、だよ。
なんでそんな、フリオニール優しいんだよ。

「なんで、責めないんだよ!?俺の、俺のせいだろ!?」
「でも、ほんとたいしたことないし…」
「たまたまだろ、敵が、もし強かったら…っ」

そう、敵が強かったらこんな怪我ではすまなかったかもしれない。
フリオニールは優しすぎる。多分、考えるより先に体が動いたのだろう。

「…ぅ…フリオ、ごめん…」
「…ティーダ」

涙がボロボロ落ちた。
フリオニールが傷つくのが嫌だ。
それよりもなによりも、彼に庇われる事態になった自分の弱さと迂闊さに、情けなくて、悔しくて。
いっそ、責めてくれればいいのに。
いつもみたいに、ちゃんとしろ、って言えよ。
なんでこんなときに優しいんだよ。

「フリオの、ばか。俺なんか庇って…怪我なんかして、」
「ティーダ、なあティーダ。俺はごめんって謝れるより、ありがとうのほうが嬉しいかな」
「…でも、」
「それに俺が好きでやったことだ。ティーダを責めたりするはずないだろ」

血が付いた手とは逆の手で、フリオニールは俺の頭をくしゃりと撫でた。

「だから泣くな。ティーダが泣いたら、俺も悲しくなる」
「フリオ…」
「それに、」

フリオニールが俺の瞼に口づける。

「好きな子を守りたいと思うのは当然だろう?」
「…ばか。ん…ありがとう、な。俺も、フリオニールを守れるくらい強くなるから」
「え?いや、俺は、」
「好きな子を守りたいと思うのは当然なんだろ?」

大切なものを守れるくらい強くなりたい。少なくとも、今回みたいにならないように。
なあ、フリオニール。
俺はフリオニールの優しさに救われてるんスよ。

「フリオ…ありがとう、ごめん。大好き。」

涙を拭って、フリオニールに笑っていったら、顔が物凄く赤くなってた。




(110611)
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