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もやもやする。
心の奥が、熱くなって、すぐに急激に冷えていく。
今自分は、いつも以上に無愛想な顔をしているのだろう。
ああ、自覚はしているんだ。スコールは一人頭の中でごちた。

自分感情があまり顔にでない。
それは時によって良かったり、逆に悪かったりしたものだが、今はそれに感謝とも恨みともとれる思いを今抱いていた。

気付いてほしい。
いや、気づかないでくれ。

スコール自身でさえわからない感情の浮き沈み。
無性に叫びたくなったり、周りにある物に対して破壊衝動が生まれたり。

そんなこと、自分ができないのは知っている。
感情を表に出すのも、得意じゃない。
こんなとき…どうすればいいか、わからない。
爆発しそうだ。
こんな訳のわからない思いのまま皆と一緒にいたくなかった。

休憩時間なのを感謝しスコールは一人静かな場所へと足を向けた。



あてもなくただ歩く。
ガンブレードのカシャ、という音しか聞こえなくなって、自分で思っていたより皆から離れていたと気づく。
スコールはため息をついた。
自分は何をしているんだ。
何をしたいのかわからない。

心の中は、もやもやしたままだ。

「…スコール?」
「!?」

声がして咄嗟に振り向く。
珍しくアナザーのクラウドと目があった。気がつかなかった。
自分の失態に少しへこみながらスコールはクラウドの名を呼んだ。

「…あ、すまない、驚かせるつもりはなかったんだ」
「…いや」

ということは、気配を消していたわけではなく、ただ俺が本当に気づかなかっただけで。
スコールが静かにへこんでいるのを知ってか知らずか、クラウドは鋭くも優しい眼光をスコールに向けていた。

「誰でも、自分がわからなくなることはある」
「え?」
「自分自身が何を思い、何をしたいのか。不思議だな。自分のことなのに、わからないんだ」

一つ一つ区切るようにクラウドは喋る。
心なしか表情が柔らかい。
クラウド自身のことを言っているのか、スコールのことを言っているのか。
いや、そのどちらもだろう。

「スコールは17歳だったな」
「…そう見えないとよく言われる」
「それでも、17歳だ。ティーダもそうだが、あんたたちは溜め込んで、爆発するタイプだと思う。あくまで予想だが」

爆発。
さっき自分が思ったことと同じ言葉。
スコールは始めてここで動揺をみせた。

「…わからないんだ。もやもやしているんだ、さっきからずっと」
「うん」
「あのまま…あいつらといると、怒鳴り散らしそうで…そんなこと、したいわけじゃ、ないのに」

言葉の最後でスコールは俯いた。
感情の出し方を知らない。
溜め込んで溜め込んで、抑えて押し込んで。
なくなったと思ったら、まだ自分の中にいて。
感情をコントロールしているんじゃない、できないから、押さえ込む。

「スコール。肩、借りてもいいよ」
「…?」
「こういうときは思いっきり泣くといい。答えは見つからなくても、何かが変わる。あんたの、心の何かが」
「………」
「泣くことは悪いことじゃない。あんたは泣きたくても、泣けないんだろう。誰も、俺も、見てないから」

スコールより少し身長の低い体が、スコールをぽんぽんとあやすように抱きしめる。
「…っ、…ぅ」

クラウドの肩に顔を埋めたスコールから小さな、微かな嗚咽が漏れる。
わからなかった。
このもやもやが。
嫌だった。
自分の知らない感情が。
別に泣きたかったわけじゃない。
でも涙は溢れでる。
泣くなんて…何年ぶりだろう。

「…うん、年頃だからな、あんたは。意味もなく感情が溢れ出そうなときだってある」

クラウドの優しく語りかけるような声が心地いい。
頭を撫でてくれることが(いつもは子供扱いするなと思うところだが)心地いい。

「スコール、大丈夫だ。俺がいるから」

クラウドの優しさに、今は甘えていたい。



運命の導火線
(それは彼によって、点けられた)






(110611)
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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