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思い出せない。
何を思い出せないのさえわからない。
でも、とても大切なことを忘れている気がする。

『もう忘れない』

自分の声が頭で響く。
何を忘れないと誓ったのか。

『お前は、俺の…』

知らない男の人の声がする。
知らない…そんなわけない。
俺は知っている。でも思い出せない。
視界がぼやける。
涙を流すほど忘れたくなかったのに、声の主さえ思い出せない。

輪廻に囚われた世界。
共に戦う戦士たちは皆、記憶が曖昧だ。
セフィロスでさえ、記憶がないと言っていた。
そして俺も、セフィロスと戦う理由がわからない。
どこの世界でも、俺はセフィロスと戦うということだけはわかる。
なぁ、あんたは誰なんだ?

『お前は俺の生きた証だ』

何を思ってあんたは、何を俺に託したんだ?
涙を拭い、背負ったバスターソードに両手に持ち、目の前に掲げる。
この重い剣はきっと名前も思い出せないあんたに託されたんだろう。

覚えてはいない。
でも心が覚えてる。
バスターソード。
あんたに託された、俺には少し重くて大きい剣。
マテリア穴から太陽が覗く。

「…………あ。」
「…どうしたんだ?」

振り向くと、フリオニールにがいた。
目があった瞬間驚いた顔をして、困惑の表情に変わった。
多分俺の目が赤いからだろう。
仕方ない、さっきまで泣いてたからな。

「…ええと、いや、邪魔した…クラウド?」

困惑するフリオニールを無視して近寄る。

「ザックス!」
「え?えぇ?」

フリオニールの肩を掴んで叫ぶ。

「思い出した、ザックス!!!」

託された思いはまだわからない。
俺にとってのあんたも、あんたにとっての俺もわからない。

ただ。

名前を思い出したことが無意識に笑顔になるくらい嬉しかったんだ。
だから、

「分かち合えフリオニール!!」
「え、ちょ、クラウド?」

フリオニールに無理矢理ハイハッチをさせた。
あんたのような青い空に高く手を掲げて。
いつかは思い出す。
ザックスのことも、その願いと思いも。

二度も忘れた。
忘れたくなかったのに。



だからもう忘れない。

どんなに輪廻に囚われようが俺は忘れない。


このバスターソードに誓って。


『俺の生きた証』


その言葉に恥じないように。



願い、想い、そして兵士は誓う
(兵士は迷おうとも道を見失わない)





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