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-悩めるのばら-



俺の夢は、世界がのばらに満ちて、のばらが満ちるような平和な世界を、というものだ。
クラウドに問われたときに自分の、昔からなのかはわからないが(なにせ記憶が曖昧だ)夢なのだとしっくりときた。
世界が花に、なんてちょっと女の子みたいで恥ずかしかった。
でも俺の夢なんだ。
記憶さえも曖昧な世界で、それを糧に戦ってこれたほどに。
セシルのオーラに負けて喋ってしまったのが運の付きらしい。
いつのまにかクラウドに伝わり、そしてまたいつのまにかティーダにも伝わっていた。
ティーダに伝わればもう皆に広まったのも同然だった(恥ずかしいって言ったのに!)
100歩譲ってそこは構わない。
クラウドにはお礼を言われたしティナが一緒に頑張ろうといってくれた。
ちなみにティナはクラウドから聞いたらしい。
ということはクラウドからも広まったのか。
いや、そんなことより、俺が一番困っているのは

「のばらぁー、ご飯ッスよ」
「…あ、あぁ、今行く」

いつの間にか定着したティーダの俺に対する呼び方。
皆と合流するときに既にこうだった。
愛称。
親しい者に愛着を込めてのニックネーム。だから少し気恥ずかしいが嫌な気はしない。
でも、さ。
皆が皆のばらって言うんだ。
スコールやクラウドさえも。
もしかして…俺の名前、のばらって思ってないか?

ということで悩んでいる。
まさか自分で「俺の名前はなんだ」と言うわけにはいかないし、若い女性よろしく自分のことを名前で呼ぶわけにもいかない。ティーダなんかは俺の名前さえ忘れていそうだ。
そんなことを考えていたら落ち込んできた。

赤いトマトスープがのばらに見えてくる始末。
名前を呼ばれないのは、結構寂しいんだぞ…。

「…ぁ、…なぁってば!!」
「…え?あ、どうしたティーダ」

声のするほうを振り向くと、心配そうに顔を覗きこんできたティーダがいた。

「もしかきて体調悪いッスか?さっきから、ずっとぼーっとしてる」
「いや、考え事をしていただけだ」

ふぅん、と頷くもののティーダの視線は離れない。そういえば、ティーダは俺の名前覚えているかな。

「…ティーダ」
「うん?」
「ティーダは、俺の…、うーん」

改めて聞くのは意外に勇気がいるものらしい。
やっぱいい、と言おうとして、先にティーダが口を開いた。

「どうしたんスか、フリオニール?」
「は、…え?ティーダ、名前…」
「名前?」

くそ、不意打ちでクリティカルヒットされてしまった。

「名前ってフリオニールの?フリオニールはフリオニールッスよ本当どうしたんスか」
「…何度もそう連呼しないでくれ」

改めて面と向かって言われたら少し気恥ずかしい、な。と呟いたらティーダの頭のクエスチョンマークが増えた気がしたがそこは無視することにした。
よかった、名前忘れられてたわけじゃないんだな。
フリオニール変ッス…という声に少し笑ってありがとうと言ったらティーダはおう、と笑顔で返事をした。

トマトスープはトマトスープにしか見えなくなっていた。










9(…なぁ、のばらの名前ってフリオニールって言うのか?)
5(のばらが本名かと思ってた)
8(…のばら)
2(…皆酷いな)




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