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-A sweet fragrance-



「…ん?」

甘い、なんとも言えない良い香りが鼻をくすぐる。
それはどうやらエリオットのほうからするようで。
寮のベットに仰向けになって本を読んでいるエリオットに近づく。

「どうかしたか?」
「なんか、エリオットいい匂いする」
「はぁ?」

風呂上がりなのもあるのだけど、なんだか甘い匂いがする。
そう、女の子が使うシャンプーみたいな香りが。

「あれ?同じシャンプー使ってるよね?」
「…あぁ、そういえば、今日は前にヴィンセントから貰ったやつ使った」
「お義兄さんから…」

あのお義兄さんからの貰い物だなんて不安だなんて思うのはちょっと失礼かな。

「だけどこれ凄いね」
「ちょっと、匂いが強いな…」

エリオットのまだ濡れた髪を指に通す。
くせっ毛だけれど、意外に触り心地のいい髪は好きだ。

「僕はあんまり好きじゃないな…」
「そうか?」

近づいて髪に口づけた。
エリオットが固まっちゃっているのがわかった。

「だって、エリオットの匂いがしないから」
「…は…っ、なに、言って…」

みるみる顔が赤くなっていく。
あんまり赤くなるもんだからこちらまで赤くなりそうだ。

「僕、エリオットの匂い好きなんだよね」
「は、恥ずかしいこと言ってんじゃねぇよっ!!」

言いながらエリオットは毛布を被ってしまった。
その衝撃で本が落ちたのは気付いていないらしい。
それさえも気付かなかったのは、かなり照れてるんだろうなぁ、なんて。
毛布に隠れなかった赤く染まった耳を見て、笑みがこぼれる。

「照れてる照れてる」
「照れてねぇ!!つか入ってくんな!!」
「じゃあ、僕今日はここで寝るから」
「はぁ?なんで、」

エリオットのベットに潜り込む前にちゃっかり電気も消しておいた。

「僕のベット、本だらけなんだ」
「…片付けろよ…っ、ぁ?」

あちら側を向いていて、うなじが目の前にあったからキスしてみたら、エリオットが小さく体を震わせた。

「な、なにす…っ」
「ふふ、エリオット可愛い」
「な…っ!?」
「赤くなってる」
「なってねぇ!!」

その気になれば、突き落とすなりなんなり出来るのに、しないところがエリオットの優しさかな。

「…くそ」

それとも。

「…枕はあんのか」
「持ってきてるよ」

まんざら嫌ではないと、自惚れてもいいのかな。

「おやすみ、エリオット」
「…あぁ」

…でもやっぱり。

「もうあのシャンプー使わないでね」
「…?なんでだよ」

他人(お義兄さんだけど)から貰ったものを使うのと、彼の匂いがしないのは自分が思ったより嫌だったらしく。
ひそかにあのシャンプーは捨てるのは勿体ないから、隠しておこうとまどろむ意識の中で思った。




(たとえお義兄さんからでも、
君が他の人から貰ったのを
使うのは嫌なんだ)







(110611)
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