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-熱帯昼-



暑いなぁ。
梅雨明けと同時にこの頃暑さが増した気がする。
今ここはラトウィッジ校の中庭で、風はあるけれど、暑いのには変わらない。
あと、僕にはもう一つ理由がある。
暑いと感じる理由が。

「…ねぇ、エリオット」
「なんだ」
「僕暑いんだけど」
「そうだな」

ここはラトウィッジ校の中庭で二人でベンチに座っている。
いつもと違うのは。
エリオットが僕の肩に頭を預けて本を読んでいることだ。
体温の高い、というか子供体温の彼は暑いのが苦手だ。
人にくっついていたらもっと暑くなると思うんだけど、エリオット曰く、僕は体温低いから大丈夫、なのだそうだ。
くっついてくるのは構わないけれど、暑い。

「ねぇ、エリオット。暑いよ」
「……んー、」

本を集中して読んでいるときは周りの音とか聞こえなくなったりするけれど、今エリオットはその状態らしい。
別に気温とかエリオットの体温とかではなく、周りの視線が、暑い…ではなく熱い。
特に女の子の視線が。

中に入れば冷房が効いているのだが、わざわざ暑い外にいるのは、このベンチが気に入っているのと、エリオットがあまり冷房が好きではないからだ。

ずっと冷房だから、気持ちはわかるんだけどね。
汗で肌に張り付いているエリオットの髪をかきあげた。
なるほど、熱があるみたいに熱い。
手を下にずらしてリボンに手をかける。
いつもきっちりと制服をちゃんと着るエリオットは、こんなに暑くてもリボンも外していない。

「…?なんだ、リーオ」
「もう授業ないし、リボン外したら?」

言いながら僕の手はしゅるりとリボンを解き、襟のボタンを外す。
…あれ、なんだか視線が強くなった気がするなぁ。
エリオットがされるがままなのが珍しいのかもしれない。
エリオットの首筋に手を当てると、あきらかに自分より体温が高くなってるのがわかる。

「うわ、エリオット熱いよ大丈夫?」
「…もう少し」

これは、冷やさないと熱中症になっちゃうかも。
…それに。

「エリオット…顔がエロい」
「…はぁ!?エロ…っ!?」
「暑いせいで汗もかいてるし、顔も紅潮している。つまりエロい」
「んなっ!!」

ビックリしたせいか、反射的にエリオットは離れた。

「じゃあ、そろそろ戻ろうか」
「ちょ、待てリーオ!!」

こうすれば彼はすぐに来る。
僕だってあつくて大変だったんだから、これくらいの意地悪はいいだろう。
と一人納得して歩く。

「おい、リーオ!!」

あぁ、でもちゃんと理由は話さないとね。
「それ以上あっちにいると熱中症になっちゃうよ?」
「…まぁ、そうだけど」
「でもどうせ甘えてくれるなら部屋でのほうが、僕は嬉しいなぁ」
「……っ、な」

甘え下手な彼がほんとたまに、凄くたまに甘えてくるのは可愛いけど、

「その姿、皆に見せたくないからね」

口をぱくぱくしているエリオットに笑いかけて、先に寮へ戻った。






(…リーオ)
(あ、早かったね)
(気付いてんなら言えよ…)
(…エリオットは可愛いなぁ)
(オレは可愛くねぇ!!)





(110611)
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