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今日はやたら挑戦者と書類が多かった。月末や年末、ましてや休日ですらないのにここ最近で一番忙しかった。

疲れて動けない、という程ではないが体を疲労感が支配する。
今日は早々に、といっても日付が変わる直前だが家に帰ることにした。

予定表を見るとなるほど、明日は祝日でジムのリーダーもトレーナーも休んでいいとの通達だった。
数少ない休み、明日はどこのジムも休みだろう。休みはトレーナーだけだったりリーダーだけだったりするが全員休みは珍しい。

明日…もう今日はゆっくり休もう。



「…………」
「あ、グリーンお帰りー」

開けたドアを無言で閉めた。
ここは俺の家で俺の部屋のドアだ。何故その向こうにあいつがいる。

しばらく思考を巡らせたあともう一回ドアを開けた。やはりいた。レッドが、俺のベッドに。

「…どこから入った」
「ナナミさんが入れてくれた」
「…何故ここにいる」
「あーグリーンの匂いがするー」

俺の枕にほお擦りするレッドに殺意を覚えたのでとりあえず殴っておいた。
ああ今日は疲れた猛烈に疲れたこいつが一番疲れる。

「あ、グリーンそういえばナナミさん出かけるって」
「こんな夜中にか?」
「つっても俺の家だけど。お母さんと仲良しだよな」

殴られて未だなおベッドから離れないレッドを引きずり落とした。
お腹空いたし睡魔も襲ってくるがまずは風呂だ。

「風呂はいんの?じゃあ俺も」
「一人で入るついて来るな」
「俺もはいりたい。もうどろどろでさ」

こいつはどろどろのまま人のベッドに寝てたのか。
そのままだと本当に風呂までついて来そうだったのであとでな、と言ったらとりあえず納得してくれた。








シャワーの音がする。
壁一枚向こうには、服を一枚も着ていない魅惑的なグリーンがいるのになんて生殺しだ。
グリーンが疲れているのは俺だってわかっているから、我慢我慢。いつまでこの我慢が続くのかわからないけど。そのかわり明日は頑張ってもらおう。
ふしだらな決意をした後、お腹が空腹を訴えた。
ナナミさんが俺の分も作ってくれた夕飯がもう冷めきっていたのを残念に思いながら勝手にレンジで温める。

時計を見るともう1時を回っていた。こんな時間までジムリーダーというのは仕事するのか。
今まで倒したり共闘してきたジムリーダーたちの顔を思い浮かべる。
強くてこだわりがある癖のある人達。自由奔放な人もいるからグリーンが自分で仕事を増やしているのだろうか。

チーンとレンジが鳴った。
グリーンの分も一応温めていたが、食べるだろうか。いや多分食べるだろう。
ナナミさんが作ったご飯を、疲れたという理由でグリーンが食べないとは思えない。
グリーンはジジコンでシスコン…まあ家族思いだから。

「レッド、麦茶取ってくれないか」
「うお、びっくりしたあ」

人の家の冷蔵庫を開けるのはなんだか違和感がある。冷蔵庫を開けて麦茶とグラスを渡す。

「ちょ、グリーン!」
「ん?」
「な、…もう、ほんと…」

生殺しだ。

風呂上がりのグリーンはズボンと、上半身はタオルをかけただけの姿だった。
白い肌は桜色に染まり、濡れた髪の毛からは時折水が滴る。
襲ってくれと言わんばかりのその姿は本人は無意識だ。めちゃくちゃたちが悪い。

「…服」
「ああ、上着だけ持ってくるの忘れてただけだ」

さすがに寒いな、とグリーンは言って自分の部屋に戻っていった。
ちらと今さっき温めたご飯を見る。
ごめん、ナナミさん。
あとでちゃんと食べるから。

体に集まりそうな熱を振り払うために風呂に駆け込んだ。グリーンに風呂借りる!と言うのは忘れずに。








脱衣所に服とタオルを置いてレッドが温めていたのだろう、暖かいご飯を先に食べて部屋に戻った。

電気を付けてそのままベッドに寝転がる。間をあけずに眠気が襲ってきた。
わざわざ電気を付けたのはレッドが来るまで待っていようと思ってやったのだが、どうやら効果がないらしい。
そのままここで寝るのか、帰るのかくらいは聞けばよかったな。

開けっ放しのドアの向こうの階段の下から物音が何度か聞こえたあとレッドがタオルを頭にかけて入ってきた。

「レッド…そのままこっちで寝るのか?」「できれば」

いつもなら聞くのを待たずに勝手にベッドにダイブしてくるくせに、何故かレッドは躊躇っていた。
思考がもうあやふやで、眠気だけが俺を支配する。
どうせ、床に布団を敷いたところでこいつは俺のところに潜り込んでくるんだ。

「…電気」
「消す?」

もう体は動いてくれない。
夢に誘われるまま目を閉じた。
自分が思った以上に、疲れていたらしい。

遠慮がちにベッドに入ってきたレッドに少し違和感を覚えながら俺は意識を手放した。

「…生殺しだ」

レッドが何を言っていたのか、俺にはもう聞こえなかった。








(110610)
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