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※日記ログ


レンのファッション誌のページを捲る音と、真斗が茶を啜る音以外には静かな部屋に、真斗の凛とした声が響いた。

「常々思っていたんだが、未だに名字呼びとは味気ないと思わないか」
「…へえ、お前でもそう思うんだね」

てっきり気にしないと思ってたよ、とレンは柔らかく笑うが、たしかに自分の周りではお互いに名字で呼びあっているのはレンと真斗だけだ。
幼い頃は名前呼びだったのに、今は名字呼びなのにのは少し理由があるのだが恋人となった今ではたしかにどこかよそよそしい。

「でも、いきなり呼び名なんて変わるものじゃないだろう。それに突然変わると多分周りがびっくりするね」

近しい翔たちは知っている自分たちの関係だが、じいやジョージにさえ知られるわけにはいかないのも事実。意識はしていなかったが背徳感のようなものがあることもあるし、関係を知らない人々にとって二人は未だ仲が良好だとは思っていないに違いない。

「しかし、その…二人きりのときぐらいはいいのではないか?」
「ふうん、…名前で呼びたいの?」
「というよりは、そうだな。俺がお前に名前で呼ばれたいのかもしれないな」

いつになく素直な真斗に愛しさからかレンはふわりと目を細める。
それにつられるように微笑む真斗とレンの空気はここ最近でも滅多にない甘い雰囲気だ。

「そう?オレはそうだな、昔みたいにお兄ちゃんとか、それこそレン、とか」
「恋人なのにお兄ちゃんはないだろう」
「そうかな、オレは大歓迎だよ?うーんお前のことは…真斗、かマサかな」

顎に手を当てて考えていたレンは真斗の名前を何度か呟いた後、小さく声を上げた。

「あ、まぁくん、とか。…いやさすがにこれは恥ずかしい、かな。……聖川?」
「っ、あ、いや、もう一度言ってくれないか」
「え?…まぁくん?」

まさかそれ気に入ったの、という言葉がレンの口から出る前に頬をを仄かに朱に染めた真斗を見て息を飲んでしまった。

「まぁくん、かわいい」
「そうか、お前もかわいいぞ、レンお兄ちゃん」

からかうように言ったレンは思いがけない真斗の反撃に今度はレンの顔が真っ赤になる番だった。





a tempo espress.
(こうやって色が増えていくんじゃない?)



(120316)
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