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さらさら、と緩やかな風が頬を、髪を、撫でる。
口に加えてる短くなっていた煙草の灰が、風に乗って飛んでいくのを見て、あわてて灰皿に押し付ける。
本の、否、燃えやすいモノが多い天蓬の部屋では火はすぐ広まるだろう。

「捲簾。」
「―――…あん?」

さっきまで本を読んでいたはずの天蓬が、何故かソファーに沈むように座っていた俺を、前から抱きしめてきた。
朝、無理矢理風呂に突っ込んだせいか、天蓬からは石鹸のいい匂いがする。

「…て、天蓬?」

天蓬からこんなことをするのは珍しい。珍しいから、思わずうろたえてしまった。

「何です?」
「いや、何ですじゃなくて。」
「嬉しくないんですか?」
「や、めちゃめちゃ嬉しいんですけど。」
天蓬の、軍人にしては細い腰に手を回すと、天蓬も力を強めてきた。
暫くそうしていると、天蓬からぐぐもった声が聞こえた。

「雑誌で、」
「え?」
「雑誌で、嬉しかったことをしてあげると良い、って書いてあったんです。」

あぁ、それで。

「これが嬉しかったのか?」
「ん。僕、捲簾に抱きしめられるの結構好きなんですよ。」

…なんちゅー可愛いことしてくれるんだコイツは。
ぎゅぅっと抱きしめると天蓬がふわりと微笑んだのがわかった。

「…てんぽー。」
「何ですか?」

こちらが動く前に唇が触れた。

「キスしてって言いたかったんでしょう?」
「…ごもっとも。天蓬好きだー。」
「僕は愛してますよ。捲簾。」

こいつにはかなわない。
真っ赤になっているであろう顔を隠すために、天蓬の肩に顔を埋めた。





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