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※わりとぬるめ



夢見たのはこことは正反対なほどまったく違う故郷の景色。

長い時間別の時間軸に飛んでいってしまう、母親の笑顔。

顔も思い出せない尊厳な父親。

よく一緒に遊んだ頭の良い従兄。

なにもかもが不透明でなにもかもが不確かだった。


俺の思いも、なにもかも全部が。



「う゛、っぐ……ひ、あぁぁぁぁぁ!」
「どうした、もう音をあげたか?」
「いだ、ぁ……っふ、ああ…」
「まだ終わってねぇぞ、アルフレド」

ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が途切れなく耳に入ってくる。知っているような、知らないような低い男の声が耳元から張り付いている感覚がして酷く吐き気がした。
それでも俺の口から出てくるのは飲みきれなかった唾液と悲鳴めいた甲高い喘ぎ声だけで、縛られたままの腕は感覚がないのかすらわからず、ただ男にされるがままよがるように腰を振る。

この行為が始まって何時間経ったのか、何人目なのか、終わりを望むことさえ絶望の餌になるだけだと考えてはまた意識が飛びかけ、そのたびに引き戻されては地獄が再開される。

「なあ、アルフレド。エレンピオスに帰りたいか?」
「ひぁ、あっ…ああ、う…ぁ…あ…」
「お母さんと一緒に、か?くくっ…」
「っ、ぐ、がはっ…っ!」

腹部と頬に鋭く重い痛みが走る。
ああ、殴られたのか、と思う前に中にある男の肉棒の動きが激しくなり更に血の匂いが充満する。

殴ったことで興奮が最高潮らしい。とんだ変態だ。

「うあ、ひ…あ、あ゛ぁぁぁぁぁ」

身体が痙攣し目の前が揺れて暗闇にある微かな光さえぶれてその位置が掴めない。
頭も身体も自分のものではないくらい快感と苦痛に火傷しそうなほど熱く、もう前なのか後ろなのか、それすらもわからなくなっていた。

「あ、あ、ひ…っ、や…、やめ…も、でな…んあっ」
「イきすぎて出ねぇってか?お前のこれ、腹についてるぜぇ」

後ろを突かれながら前もしごかれ、狂ってしまいそうだった。いや、もう狂っているのかもしれない。

男の動きも、俺のをしごく手も激しくなり、そろそろ終わりか、と思うのと同時にこれで終わってくれ、と愚かにも無意識に望んでいた。
何度もその願いは裏切られたというのに。

「アルフレド…」
「あ…っが、っ――――――」

男の指が、がりっと血が滲むほど強く引っ掻きその衝撃に頭が真っ白になり息が詰まる。声にならない叫びを上げて色のない精液を吐き出せば、中にも何度目かわからない熱が注がれる。

汚らわしい熱、汚らわしい行為。そして尤も汚らわしいのは自分自身だった。


ずる、と胎内から肉棒が出ていく感覚にさえ小さく声が上がる。

暗闇だからなのか、涙のせいなのか視界はいつだて曖昧でぼやけていた。まるで俺のように。

男が動いたかと思うと涙と精液でぐちゃぐちゃな俺の顔を愛おしそうに撫で、恍惚した表情でまた手を振り上げる。

「アルフレド、俺たちはお前を愛してるんだ。玩具としてなあ。せいぜい頑張ってあがいてくれよ」

男の低い笑い声が足音とともに遠ざかっていく。
結局誰なのかわからないまま、或いはこの行為でしか会ったことないのか、そんなのはどうでもよかった。

非力な幼いときは抵抗する力もなくされるがままだった。あのときとは違う、はずなのに。

「く、…は、はは…」

何も変わらない。何も変われない。俺はあのときからなにも。
母は病気に、父は死に、故郷と従兄たちは別世界。

同胞である彼らは仲間ではなく下僕のように俺を扱う。

変わったのはでかい汚れた図体と、意地汚い生き方だけ。

どろどろの精液が太股を伝う。

もう、笑うしかなかった。



(120610)
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