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※日記ログ



夜も明けきらないうちに目が覚めた。
はっきりと覚醒した頭にもう二度寝も出来ないと悟る。
そしてなにも考えずとも体が勝手にジャージに腕を通していて、自分に苦笑した。

いつもより早い朝練もいいかもしれない。

「…なんや、もう誰かおる」

空が白みだした頃、氷帝のコートにはボールの打つ音が響いていた。
一つ二つでなく、複数の音と声。
朝練の予定時間より二時間も早いというのに、だ。
…みんな、早いやっちゃなあ。

「よう忍足、早ぇーじゃねーの」
「跡部、お前さんもやないか」
「部長ってのは、誰よりも早く来るもんなんだよ」

部員が打つ姿を見ていただけなのか、跡部は汗一つかいていない。
その言い方だと、一年の頃から部長をしている彼はいつもこんな時間に来ていたのだろうか。

「なんやねん、俺知らんかったわ。知っとったらもっと早く来とったわ」
「お前も氷帝に来てねぇだけで練習はしてんだろ。これからはこっちこればいいじゃねぇか」
「…かなわんなぁ、うちの部長さんは」
「ふん、当然だろ」

『ムーンサルトぉ!』

「お、決まっとるな」

岳人が華麗にボレーを決める。月の名前が入ったその技で、岳人が飛び上がる瞬間に朝日が顔を出す。

「ムーンっちゅうか…サーンサルトやな…」
「…はあ?」

隣で何故かぽかんとした顔の跡部に、肩に下がっているテニスラケットを指差す。

「跡部、俺と打ち合いせぇへん?」

望むところじゃねーの、と不敵に笑う氷帝の部長はテニスをしているときが一番生き生きとしているようだ。

コートを飛び交う無数の黄色。
楽しそうな部員の声。

「ほらよ、早くアップしてこい」
「はいはい、ちょっと待っとき」

ああ、やっぱり、テニス好きやなあ。




(120606)
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