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※鳥束さん下品です




人の気配を確認するには、透視よりも断然テレパシーのほうが都合が良い。この世界中にただ一人といっていいほど、この網羅にかからない規格外な奴がいるにはいるのだがそれを含めても、だ。自動的に始まる透視ではあまりにも見たくないものまで見えてしまう。
例えばトイレだ。思考だけならば『あー、漏れるかと思った』『やっぱ呑まなきゃよかった』だのと抽象的になるのに対し、透視では他人が便器に座って用を足している姿を目視してしまう。下手をすれば便器の中、排水溝…と透視が進んでいき不快度が思考が聞こえるというものの比ではないことがわかるだろう。

人を見続ければ服や肌を透かしてしまう僕にとって、外見はさほど記憶には残らない。むしろ血色の様子のほうが覚えていたりする。あんまりにも有罪顔でない限り、ああ今日は筋肉が活発だな、いつの間にか膝に傷が出来てるな。という感想のほうが先に思い浮かぶことがしばしばだ。
つまり、僕が生きてきた中で役に立ったのはテレパシーが断然上だということだ。

頭の中に他人の思考が流れ込んでくるというのは、そうでない人間からすればとてつもなく恐ろしいことに違いない。が、僕は幼少期、いや生まれたときからそうである。これが僕にとって普通なのだ。苦であると感じた時期は遠に過ぎた。

しかし、最近困ったことがある。

(はあはあマジ師匠エロいっすまじうなじ、うなじ!あああ舐めたい舐めたいなあ舐めたら怒るかな)

怒るに決まっているだろ。

通学路を歩く僕の背後に付きまとう鳥束からのうるさい好意アピールだ。好意アピールにしては邪悪な念が込められているような気もするが、とりあえず鳥束は僕に惚れているらしい。
いつからはわからないが、とにかく気づいたらこの面倒くさい感じになっていたとしか言いようがない。

(うっは、やっべ!風に乗って師匠の香りが…!いい匂いするなあもっと近くで嗅ぎたいなあ)

その匂いがシャンプーやボディーソープだとするならば、父も同じ匂いだぞ。

今までにもこういうことはあった。さすがに男では初めてだが、いつも人と距離を置いている僕になにを勘違いしたのか、クールだの一匹狼だのと好意を寄せてくる女子は少なからずいた。
あんな両親でも顔だけは良いのだから、その子供である僕にも引き継がれてしまったらしい。幸いにも不特定多数に騒がれるほど派手な顔立ちではなかったのは感謝しよう。

その勘違い女子も、フラグをへし折りまくる僕に半月もせず去っていく。
だが、今回は非常に厄介だ。

鳥束は僕が他人と距離を置く理由も、ましては超能力者だということも知っているのだ。そう、知っていて、これなのだ。
無言でスルーする僕に飽きもせず付いてくるのは、こいつの思考が僕に筒抜けなのも知っているからだ。

こいつが僕に好意を寄せていることを知っているのを、こいつは知っている。

厄介極まりない。

元々の性格もあるのだろうが、欲の含めた邪念を隠しもせずばんばん僕に飛ばしてくる。
フラグをへし折ろうにも、こいつには幽霊という僕にすら見えない味方がいる。逃れるのは容易ではない。

超能力者だということを知られているのは(あ、やべ、見てたら興奮してきた)こんなにも厄介なものだったのか。(路地裏に連れて…いや、学校のトイレとかもありじゃね)これからはより一層用心しなければならないな(ああああ押し倒してえええ口にオレのくわえさせてぐちょぐちょに)うるさい。

「はあはあ、すみません、斉木さん、ちょっとオレのを」

口には出すな消すぞ。

なんだって僕はこいつの欲望垂れ流しの思考を聞いていなければならないのか。
何度でも言うが、思うだけなら自由だ。思うだけなら、こいつの頭の中で僕が淫らになろうがなんだろうが構わない。ありえないことだがな。

(ああっ、冷たい、師匠!でもやっぱりオレをぶっ飛ばしたりしない辺り優しいな。好きだなあ。好き、好き好き好き)

こいつの中にも、純粋な愛というやつは存在するらしい。やれやれ。僕なんかじゃなく、早くいい人を見つけるといい。
お前のその欲望を受け止めてくれる相手をな。

(こんなにエロ可愛い師匠なら、もしかしていつも一緒にいるあいつらも…っ!あいつらには渡さねぇ)

…安心しろ鳥束。それは絶対ない。あと一緒にいるんじゃなくて、勝手に付いてくるんだ。お前みたいにな。



(121023)
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