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※死ネタじゃないよ!




首を絞められてる。そんな感覚に息が詰まる。けれど実際は、首に手なんかなくて。あるのは首にある喉から出る、ひきつったような、甲高い声だった。わりと低いはずの俺の声が、振動にあわせて何オクターブか上の音を出す。俺の身体の許容範囲を越えたそれは、きっと後に喉を痛める。
はあはあと必死に肺に空気を送ろうとしても、何故だが身体は言うことをきかない。声を出すのに必死で、空気を飲み込むことなんか忘れちまっている。俺が欲しいのは空気のほうなのに、なんて理不尽だ。理不尽といえば、この俺に覆い被さってる男にも言える。ああ、理不尽だ。なんで俺がこんなに苦しい思いをしなくちゃいけないのか。

「っあ…、ふ、あっ、あ…、…っ」
「…なあ、気持ちええ?」

俺とは裏腹に、掠れたような低い声だった。そうだよな、抱くほうは簡単だよな。俺は息も出来やしない。
滲んだ視界でも、焼けた肌は見分けが付いた。銀だか白だかの色をした髪を揺らして、修二は俺を抱いていた。
俺のケツにペニスをぶちこんで、興奮してるだなんてとんでもない性癖だ。でもこの世界にはわりととんでもない性癖を持った人間は沢山いる。ケツにペニスをぶちこまれてよがっている俺もとんでもない奴だった。人間というのは厄介なもので、快楽には非常に弱い。俺も、こいつも例外じゃなかった。それだけのことだ。

修二の手は、いつの間にか俺の両腕を掴んでいて拘束されているようだった。手の強さは凄まじい。きっと痕が残る。
獲物を捕らえる捕食者のような目で俺を見ていた。そんな目をしなくても、俺は逃げたりしないのに。わかってないね、まったく。
人間の一番弱いところに肉棒が突き刺さっているというのに。もう、止めを刺されてるといっていい。俺は逃げられないし、逃げたりしない。修二に殺されてしまったのだ。今までの俺は。

「しゅう…っ、んっ、手…」
「っ、あ、ああ、堪忍」

腕の鎖が解ける。自分で言い出したくせにそれが少し名残惜しい。なんと恐ろしいことか。前の自分なら、きっと微塵も感じなかったに違いない。でも、もうその俺は死んだ。
自由になった腕を、修二の首に絡める。修二も、俺のようになればいい。このまま絞めて殺してやるよ。

熱いのは俺だけだと思っていたら、どうだ。修二の身体も焼けるほど熱かった。日焼けした肌を赤くして、必死に泣きそうなのを耐えている。そんな顔。

ああ、なんだ。

俺と一緒に、もしかしたら同時に、死んでいたのかもしれない。これじゃ、まるで心中だ。
なら、伝わるかもしれない。どうか、どうか、茶化さないで。受け止めて。そして、同じように言い返してほしい。

「修二、―――――」


俺からの、『愛してる』を。



(121023)
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