Main

Start++


※捏造ばっかり
※No.2とNo.4が同室設定



携帯のディスプレイを見つめているのに内容がまったく頭に入ってこうへん。目が滑る、とはこういうことなんか。いや、ちゃうわ。目が滑るのは文章やらその媒体やらに問題がある。好きではない人からのラブレターとか、意味のわからん外国語とか。読む気がないから滑るんや。でも、今はちゃう。
仕方なく携帯を閉じる。一軍が海外遠征に行ってもうて一人寂しくこの広い部屋をつこっとったけど、今日やっと帰ってきた。一ヶ月なんて長いようで短いわあ。

俺の部屋に来はったんは、前の同居人とは違おうとったけど。

「携帯はもういいのか?さっきから鳴りっぱなしだったみたいだけど」

前の同居人がよく座っとった椅子に手持ちぶさたなんか暇そうにオレンジで遊んどるんは、お頭が拾ってきたらしい越前リョーガ。前のNo.4どこいったんや。
海外遠征でもこうして入れ替えがあるんか。怖い怖い。

「良く言うわ。自分、俺のことずっと見とったやろ」
「だってさあ、暇なんだよ」

何故かオレンジを皮ごと丸かじっとる越前リョーガは、子供みたいに体を前後にゆらゆら揺れとった。いや、俺もあのお頭ですら一応まだ子供なんやけど。
さっきから目が滑る原因は、この人にある。そないずっと視線を感じたら何も集中できんわ。
越前リョーガは名前からしてまあ日本人なんやろうけど、瞳が青い。外人さんみたいや。髪は普通。身長は多分俺のほうが上、やな。
第一印象はクールそうやな。と思っとったけど案外お喋りそうや。

心無しか「構ってくれんのか」とでも言いたげに瞳を輝かせとる、気がする。ああ、そういえば。さっき会ったお頭に案外構ってちゃんだからな、て言っとったな。忘れてたわ。

「なあ、名前いいか?」
「え、そっからなん?さっきお互い自己紹介したやろ」
「違う違う、修二でいいよな?俺のことはリョーガでいい」

それも自己紹介のときに言うもんとちゃうかな。ええけど。

それから、ベッドに横になっとる俺の隣にリョーガは来て他愛のない話ばっかりした。女の話から、テニスの話まで。思ったよりリョーガはお喋りで、俺もお喋りなほうやけどほとんどリョーガが喋っとった。時々出てくる、アメリカ人みたいな日本のイメージに外国育ちなんやなあ、と思わせた。身振り手振りの大きさとか、やけにいい英語の発音とか。
初対面やのに、そんなこと忘れてしまうほどリョーガは気さくやった。
目が合うと、笑顔で返してくる。
人懐っこいなあ、見た目と違って。

「よく言われるぜ。なんでだろうな」
「あれ、俺声に出とった?うーん、なんやろ。イケメンってより美人系やん、自分。あと猫目やからとか」

まさに、きょとん。という効果音が付きそうな顔でリョーガは押し黙った。うん、確かに青い瞳は猫目やし、顔は整っとるけどどちらかというとキレイ系や。俗にいう美人は怒ったら怖い、みたいなやつに思われてしまうんやろなあ。

「……へえ、お前から、つーか日本人から見ても俺ってそう見えんの?」
「あっ、でも女みたいって言っとるわけやないで。男でもいるやん、美人…言い方が悪いんかな?美丈夫、やったっけ。みたいな」
「ふぅん。あっちじゃ、日本人は華奢に見えるからそう言われるんだと思ってた」
「そう言われる?」
「美人だの可愛いだの、テニスやってんだからそれなりに筋肉あるのに腰掴まれて細いなって言われたな」

そう言われて、リョーガを上から下まで見てみる。俺から見て、リョーガはそんなに細いとか華奢だとは思わへん。ただ、外国人のスポーツマンやと偏見かも知れへんけど、ムキムキなイメージがある。それこそお頭みたいなん。そんなんと比べたらあかんよなあ。

特に何も考えんと腰のあたりを掴んだら、
少しだけリョーガの体が跳ねた。

「そやなあ。別に普通やな…ん?」
「ちょ、うおっ」
「あれ、もしかして脇腹弱い?くすぐったい?」
「ま、まて、うっひゃあ!」

うわ、意外も意外や。こいつくすぐりに弱い。久しぶりに童心というか好奇心というか、悪戯心が沸いてきはった。
にこ、と笑顔で見つめたらぎこちないけどリョーガはちゃんと笑顔で返してきた。抵抗しとるつもりなんか、俺の腕を掴んどる手は無視する。
これはやるしかないやろ。

「うぎゃー!や、やめ、うわっはっは、は」
「なんやー、ほらほら、くすぐり弱すぎるで自分」
「あっはっはっは!ちょ、や、やめろって」

逃れようと身をよじりまくるリョーガの抵抗が思ったより凄まじい。けど、笑って力が入らへんのかだんだんとそれも弱くなっていく。

「っあ、やば…しゅ、修二、ストップ、ストップ!」
「なん、もう降参か?」
「ちが、いや、違くない!降参、降参だからっ!」


笑いすぎたのかあんまりにも涙目で掠れた声やったから、とりあえずくすぐってた手を止めた。触れた肌が熱い。リョーガは肩で息をしとって、汗で顔に張り付いた前髪のせいで表情は見えない。あかん、やりすぎたか?

「…っ、は、は…っあ……」
「…リョーガ?」
「ふ、…は、ぁ…っ」
「ちょ、ごめん、リョーガ。やりすぎたわ」

返事はなく、腕で顔を隠される。収まらない荒い息に、罪悪感が出てきた。もしかしたら、ほんまにくすぐりが苦手なんかもしれん。そこまで考えてやれへんかった。まだ出会って数時間やのに、図々しすぎやわ俺。

「ごめんて。なあ、泣いとる?怒っとるん?」
「…っひ、ぁ…、手、どけろ」
「え?あ、ああ」

まだ脇腹にあててた手をどけて、ついでに体ごとリョーガから離れた。どないしよ。怒っとるかな。
こんな人懐っこい奴を怒らせるなんて。しかもこれから同室やのに。

「リョーガ、堪忍、怒らんといて」
「………」
「なあ、リョーガ」
「………っうあー!!あーもうやばかったー」
「え、…え?」

がばっと起き上がったリョーガは、もう通常通り、って感じやった。まだ汗ばんでいて顔は赤いけど泣いてもなければ怒ってもなかった。呆気に取られる俺に、困ったようにリョーガは笑いかけた。

「やめろっつったろ。危なかったぜ、勃ちそうだったじゃねーか」
「…え、勃ち…?」
「触られるとぞくぞくすんだよ。ん?ああ、大丈夫大丈夫、収まったから」
「お、あ…うん、えと…堪忍や」
「おー、いいっていいって、気にすんな。…あ、もうこんな時間じゃねーか」

どこまでも気さくなリョーガの言葉に感謝しつつ、時計へ目線を向ける。うわ。もう深夜といっていい時間やった。
明日は試合がある。夜更かしはちょっとあかんなあ。


「じゃ、ちょっと俺シャワー浴びてくる。先に寝るか?」
「せやなあ。俺は先に寝とくわ」
「ん、Good night.」
「おお、おやす――…」

ちゅ。ほっぺに柔らかい感触があった思うたら、リョーガの顔が離れた。え、なんや。キス?ほっぺに?

「おやすみのキス。んじゃシャワーいってくる」

背中を向けてひらひらと手を振りながらリョーガは洗面所に消えていきよった。
さすが外国育ちや。でも日本人で日本育ちの俺には、刺激が強すぎる。

今日、俺寝れるんかな。

流れるシャワーの音に熱くなった顔を冷ますために深呼吸をして、ベッドに潜り込んだ。















********
リョーガさんはイケメン寄の顔だと思うんですが種ヶ島さんの美人の幅が広そうだなと。リョーマと同じ顔だからイケメンと美人の間のような気もします。





(121008)
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -