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どこかの本で読んだことがある。いや、或いは雑誌かもしれない。それとも、誰かが話しているのを聞いたのかもしれない。
そう思うほど、曖昧な手順で手に入れた情報だった。それを覚えていない一番の理由は、手塚自身が興味がなかったのが原因とも言える。
その内容を簡潔に言えば、『たまには積極的になれ』ということだ。
思い返せば、いつも跡部からのアプローチに答えているだけだ。跡部は元々、積極的な性格だ。それは恋愛面ですら、男である手塚相手ですら、変わらなかった。
だから、というわけでもないのだろうが。手塚からの初手はないに等しかった。跡部からの不満も聞いたことはなかった、けれど。
愛想尽かされる、なんてことはあり得ない。それは自惚れでもなんでもなく、事実であるし、手塚はそれを理解している。
ただ。きっと手塚が積極的になれば、跡部は喜ぶだろう。恋人として、相手が喜んでくれれば嬉しい。

「…跡部」
「なんだよ手塚。」

手塚の手が、そっと跡部の髪を慈しむように撫でる。珍しい行動に、跡部の瞳が驚きで少し見開く。その反応に内心ほっとした。嬉しさも、垣間見えたからだ。

「好きだ、跡部」
「んだよ、いきなり」
「いや、言いたくなっただけだ」
「そうかよ。…俺も好きだぜ」

いつもの不敵な笑みではなく、穏やかな微笑みだった。この表情がとても好きだ。好きなのだが。

「照れたり慌てたりはしないのだな」
「お前、俺になに求めてんだよ。照れたり慌てふためいたりしてほしいのか?」
「…いや、お前はそのままでいい」
「そうかよ」

それでも、やはりどこか嬉しそうだった。たまにはこんな風にするのも悪くないのかもしれない。









「…なんやねんあいつら。部活中やっちゅーのはわかっとんのか」
「忍足、一応部長だからわかってると思うよ。でも、だからこそ…腹立つよね」
「ほんまやで。俺らウォーミングアップで何周すんねん」
「そうだよねえ…ちょっと、目を覚まさせてこようかな」
「自分…相変わらずやな、不二」



(120830)
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