「はい、ユウキ君」

「あ、…ありがとう」

満面の笑みと共にハルカから渡されたのは可愛らしくラッピングされた箱だった。
今日がバレンタインと呼ばれる日で、その箱が“そういった意味”を込めて贈られていると知っている俺は、赤くなる顔を見られない様に、けれど決してぶっきらぼうにならないように受け取った。


「ねぇ、早速だけど開けて食べてみてくれる?」

「え?あ、ああ。…いいよ」


受け取ってすぐに、ハルカから急かされるように促され、その可愛らしい包装を壊してしまわないように丁寧に開けていく。


「あっ…」

「あんまり上手く型が取れなかったんだけどね……。でも、味には自信があるからっ!」


開けた箱の中身はやはりチョコレートであったが、デザインが凝っていて俺はそのすごさに驚いて目を見張った。

箱の中は俺の手持ちのポケモンを模したチョコレートと、その真ん中に赤く着色されたハート型のチョコレートが入っていた。
彼女の言う通りチョコレートの一つ一つは不恰好だったけれど、それぞれ心を込めて作られたというのが分かるほど、一生懸命に作られたのが見てとれた。


「…本当に食べていいのか?」

「その為に作ったんだもん。食べてもらわなきゃ困るよっ!だからね、早く食べてよ!」

「…じゃあ、いただきます」


またもや食べるように促されたが、さすがにポケモン型のチョコレートを食べるのは勿体ない気がしたので、まずは真ん中にあるハート型のチョコを摘み、ゆっくりと味わうように口の中へ入れ、咀嚼した。


「…んっ?!」

「あっ、もしかしてチョコの中に入ってるのにビックリした?…それね、中に入ってるのはいちごのリキュールなの。甘酸っぱくて美味しいでしょ?」


チョコレートへ歯を立て割った途端、口の中に甘酸っぱいナニかが広がり思わず声を上げると、彼女はいたずらが成功した時みたいな笑顔を浮かべながら、今俺の口の中で弾けたものの説明をした。
リキュール。お酒特有の噎せるような味といちごの甘酸っぱい香りがチョコレートと見事に調和しており、気が付けば口の中のチョコレートはいつの間にか溶けてなくなってしまっていた。


「…どうだった?」

「美味しかったよ。…今日はありがとな」

「どういたしまして。そう言ってもらえると嬉しいよっ!」


そう言ってにこりと笑う彼女に、今日も俺は恋をする。



(St. Valentine's day )



溶けきったハズのチョコレートの甘さが、ふわりと広がった気がした。


(Side.BW)