※ついったRTネタも入ってます





「あの、…シルバー?」

「なんだ?」

「なんだ?…って、このキレイに包装された箱は何?」

「チョコレートだ」

「は?」

「チョコレート。今日はバレンタインだろ」


それだけ言うとシルバーは黙ってカフェオレを飲みだした。

ポケギアでシルバーから呼び出されて向かったコガネのデパート内にある喫茶店で、オレはシルバーと向かい合いながら座っていた。
オレの目の前にはサイコソーダ。シルバーの前にはカフェオレ。そして二人の前には可愛らしくラッピングされた“チョコレート”の箱。
彼に言われて初めて、そういえば今日は二月十四日で、世間ではバレンタインと呼ばれる日だったな、などとオレは箱を凝視しながらぼんやりと思った。

オレだって男だから女の子からチョコを貰えればそれは嬉しい。けれど実際にチョコをくれたのは母親と幼馴染のクリス、そして目の前にいる男、“シルバー”だった。


「そう、だったな。…あ、ありが、」

「言っておくが、それは“本命”だからな」

「っ?!」


とりあえずせっかくの好意を無碍にするわけにもいかないと、目の前のチョコの入った箱を受け取ろうとすると、まるで釘を刺すかのように強い口調でシルバーは告げた。
残念なことに母さんから貰ったのもクリスから貰ったのも義理チョコだったオレにとって、実質生まれて初めての“本命チョコ”なのである。
その言葉に箱へと伸ばしかけていた手がピタリと止まったが、シルバーが早く取れとでも言いたそうにギロリとこちらを睨み付けてきたので、オレはしぶしぶとそのチョコを受け取りリュックの中へ収めた。


「あの…“本命”って、…その」

「ああ。俺はお前が好きだ。もちろん、“そういう対象”でな」

「…っ!で、でもオレ男だし…」

「男とか女とかじゃなく、俺はゴールド、お前がいいんだよ。だから、」


なんとかシルバーと会話をしようとするが、あまりにもストレートに"好き"と言われたことの無いオレには耐性が無く、顔を赤くさせてあたふたすることしか出来ず、会話が続かない。
だが、シルバーはそんなオレなどお構いなしに飲み干したカフェオレのカップをソーサーに置くと、すっとオレの方へ身を乗り出し、赤くなったオレの頬へ無理矢理口付けを落とした。


ちゅっ


「っ!? …お、お前!」

「明日からはそのつもりで接するからな。覚悟しておけよ。…それと、ここの金は俺が払っていく。お前はゆっくりしていくといい」


軽いリップノイズを立てた彼の唇が触れた頬を片手で覆いながら驚いた表情でシルバーを見るオレを置き去りにし、シルバーは伝票を持ってレジで精算した後、デパート内の喧騒の中へと消えてしまった。



(St. Valentine's day)



「何なんだよ、一体…」


やっとの思いで発した言葉は少し震えていた。


(Side.レゴー)