※ついったRTネタ





「…ゴールド?」


うららかな午後の昼下がり、俺は暖かな日差しが差し込む部屋のテーブルでゴールドが寝ているのを発見した。
ゴールドがなんの夢を見ているかは分からないが、頬が柔らかく緩んでいるのを見る限り、いい夢のようだ。

俺はそんなゴールドを起こさない様に、そして風邪を引かないようにと薄いブランケットを眠る彼の方にそっと掛け、真上からその眠る横顔を眺めた。

今日は誰もいないから。と俺の家へ招き恋人らしく甘いひととき。なんてムードを作り出す前に、俺は本業としているジムへの挑戦者だとリーグ本部から連絡があったので、ここで待っているというゴールドの言葉に甘え、俺は急ぎ足でジムのあるトキワシティまで向かった。
そして挑戦者との対戦を終え、来た時と同じように急ぎ足で自分の家まで戻ったところで、冒頭の状況になる。


「(なかなかに骨のある挑戦者だったからな…。時間が掛かり過ぎちまった)」


さらりと、眠る彼の髪をそっと撫でながら心の中で呟く。

本当は、もっとこいつとの時間を作りたい。
でも、俺はジムリーダー。ゴールドはジョウトに加えてカントー地方に生息するポケモンを捕まえて図鑑を埋める旅をしているトレーナー。
どちらも忙しい身なのに、今日みたいな日に呼び出してもゴールドはいつも俺の予定に合わせてくれる。


いつもいつも、ゴールドを待たせてばかりの俺。
いつもいつも、俺を待ってばかりいるゴールド。


「でも、どうしてお前は何も言わないんだ?」


寝ているから。そんな気の緩みから、ついに俺の口から本音が零れた。

俺がジムリーダーで忙しいから。なんて言うのは文句を言わない理由にはならない。
だってそんなの互いに分かりきっているから。

だったら何故、こうして会った時に甘えた言葉を一つも零してくれないんだ?
何故、俺に甘えてくれないんだ?

俺ばっかりがゴールドを好きなんじゃないかって、最近の俺はずっと思っている。
ゴールドも俺を好きなのは確かだけど、俺の愛は、ゴールドにとって重すぎる荷物になっているんじゃないかなんて、普段の俺からは考えられない様な暗い考えまでしてしまう始末。

柄にもない。って言ってお前は笑ってくれるか?
それとも、


「………っ!」


その先の結末なんて、考えたくもない。

くしゃりと泣きそうになった顔を歪ませ陰気な考えを打ち消して、この幸せがまだ続きますようにと、未だ眠り続けるゴールドの剥き出しの片耳に、そっと祈りを込めて口付けを落とす。



(幸せを閉じ込める神聖なキスを)



それは狂気にも似た祈り。