※ついったでRTされたネタ





「うわぁーっ!また負けたーっ!」

「はは、この俺に勝とうなんて百年早いんだよっ!!」


爆発音と共に“GAME OVER”の文字が表示されたテレビ画面を横目に、部屋の主であるゴールドは床へ倒れ込んだ。
俺はそんな彼を横目に、テレビ画面へと目を動かす。

自分達は一体何時間このゲームをしていたのだろう?俺が午前の内に彼の家に訪れていたので、ゆうに二時間はこうしてゲームに夢中になっていたのではないだろうか。
画面を見続けていた目も同じ体勢を強いていた身体も疲労を訴えてきたので、俺はゴールドに断ってからゲームとテレビの電源を落とした。

目の前にある傷一つない新品のゲーム機はゴールドが母親に買ってもらったものらしく、ここ最近は図鑑集めよりも夢中になってやっており困っているのだと、彼の母親はけれどもその笑みを崩す事無くグリーンに言っていたのを思い出す。

だが、今日は本当は俺達はデートをするハズだったんだ。
けれど恋人であるゴールドに上目遣いで(本人は無意識だろうが)「一緒にゲームしましょう?」なんて言われて断れるハズもなく、結局こうして彼が飽きるまで付き合ってしまった。

ゴールドは俺が電源を消すと同時に起き上がり、にこりと笑いながら礼を述べた。


「はーっ、遊んだ遊んだ!…今日はありがとうございました。やっぱりゲームは対戦に限りますねっ!」

「その割には俺にボロ負けだったくせに…」

「勝ち負けとかじゃなくて、一人でやるよりも二人とか複数の方が断然盛り上がるのは後者でしょ」

「…まあな」

「でも、本当に今日はありがとうございました。……お礼と言ってはなんですが、今からどこか行きますか?」

「どうしたんだよ、急に…」

「いえ、その……ほら、今日は一応デートの予定だったじゃないですか…」

「…っ?!」


今までゲームに夢中になっていた彼からは到底想像もつかない様な言葉が飛び出し、俺は大きく目を見開き息を吸い込んだ。
爆弾発言をした当の本人はほんのりと顔を顔を赤くさせ、もじもじと身体を揺らしている。


「すみません。本当は今日はデートだからゲームもほどほどにしなきゃとか思ってたんですけど、グリーンさんも一緒にやってくれるって言ってもらってすごく嬉しくて…」

「……」

「だからついつい夢中になって……その、…嫌いになりましたか?」

「んな訳ねぇーだろ…。ったく、そう思うんならゲームなんて後回しにして先に俺を構えよ」

「…すみません。…ってか、ゲームにヤキモチ妬くなんて…」

「うっせ。元はと言えばお前が俺そっちのけでゲームに夢中になるからだろ?」

「だって…。やっと買ってもらったものだったし…」

「お前、本当に俺とゲームどっちが大事なんだよ…」

「グリーンさんに決まってるじゃないですか」

「…それならよし」


最後の方はいつも通り生意気なゴールドに戻っていたが、それでも俺は嬉しかった。
正直、ゲーム相手に嫉妬なんて子供っぽいと思ったが、彼はきちんと分かってくれているんだろう。だからさきほどのような言葉が出てきたのだと俺は感じた。
それに、いつも軽口を叩いている彼だからこそ、こういった一言はなによりも重く貴重なものなのだと思った。

そんなゴールドが可愛らしくて、気が付けば俺は隣にいるゴールドの身体を抱き寄せて、耳元に唇を押し当てながらそっと囁いた。


「まあ、デートはまた今度でいいや。でも、……今日はゴールドからキス、してくれよ」

「…っ!? ……嫌です!と言いたいところですけど、今日はオレのゲームに付き合ってもらったのもありますし……きょ、今日だけですからねっ!!」


断れないようににこりと有無を言わせぬ微笑みを返せば、ゴールドは顔を真っ赤にさせながらそれでも俺の言葉に素直に従い、ぎゅっと目を閉じて顔を近付けてきた。
だから俺も彼にならって目蓋を閉じ、彼の唇を柔らかく受け止めた。



(広がる熱)



甘い熱がゆっくりと身体に入り込んでいく