※ついったでRTされた赤金ネタ ※二人はGB版なので洞窟にいます ※当サイトのレッドは陽気な性格です ―『便りを寄越さないのは元気な証拠って言うけれど…』 そう言って“彼”の母は少し寂しそうに笑ったのを、今でもオレは鮮明に覚えている。 洞窟でポケモンを育てる彼の元へあしげく通う様になったのは、多分そんな親不孝な彼にせめて一度だけでも連絡を入れてほしい。なんてお節介をしたのがそもそもの始まりだったように思う。 ビシッ 「痛ぇっ!…なにするんですか、レッドさんっ!」 「こんな状況で考え事なんて随分余裕じゃん」 「あ、……」 額を指で弾かれ、痛みに現実へ意識を戻すと、目の前にはさきほど脳裏にちらついた彼、レッドがいた。 そして彼に言われて見てようやく、自身が置かれている状況に意識がいった。 シロガネ山の洞窟の最深部。いつも彼、レッドのいる場所で、オレは彼に押し倒されていた。彼はご丁寧にオレが逃げられないように、上に跨った状態で。 何があってさっきのことを思い出していたのか思い出せないが、今はこの状況に対する説明をしてもらいたい。 「…すみませんでした。……で、なんでオレはレッドさんに押し倒されているんですか?」 「………」 「あのー。黙ってちゃ分かりませんって」 話す様に促してもこのザマだ。まったく、いつもの煩さはどこにいったのやら、と内心思いながら、けれどもオレは彼が話し出すまで根気強く待った。 しばらく互いに無言な状態が続いたが、彼はようやくその重い口を開いた。 「俺、好きな人ができたんだ」 「………は?」 好きな人が、出来た…? まさか冗談だろうと彼の顔を伺えば、彼は真剣な表情で神妙そうにしていたので、そんな茶化すような言葉は喉から先を通ることは無かった。 茶化す気にはなれないが、どうにも信じがたい。なぜなら、彼が自身に会うまでの約三年間はずっと洞窟に籠っていたと言っているのだ。こんなレベルの高く、しかも凶暴性を秘めたポケモンがいる洞窟で出会いなんて無いに等しいのだ。そもそも、俺と彼以外のトレーナーにすら会ったことも無いのに、彼は何を言っているんだとオレは思った。 だが、そんなオレの思いなんて露知らず、彼は未だオレの上に跨ったまま話続ける。 「好きな人って…。それって、恋してるってことですか…?」 「ああ。ソイツのことを想うと胸がぎゅうって苦しくなるし笑顔を見るだけで顔が赤くなるんだ…」 「は、ぁ……」 「んで、そのことをグリーンに話したら」 ―『ああ〜、そりゃ“恋”だわ』 「って、言われたから…」 「………」 チクショウ、余計なことしてくれやがって。心の中でオレはトキワのジムリーダーを恨んだ。 多分、彼がここの所そわそわしていたのはグリーンの電話が原因だったのだ。と結論付け、だがこのまま彼に跨られていても困るので、とにかく早く話を片付けてしまおうと、続きを促した。 「で、レッドさんはその子に告白したんですか?」 「いや…。なんか断られそうで怖いんだよな…。もし否定されたらどうしようとか、拒絶されたらどうしようとか…」 これは意外だ。オレは思わず大きくリアクションを取ってしまうところだった。 オレの知っている彼は陽気でお喋りで、とても積極的な社交的なタイプだったので、こうした弱気な姿勢な彼はひどく新鮮だった。 でも、彼の普段の性格を壊すほど想われている意中の相手がひどく羨ましくなったのは何故だろうか。 自身に芽生えた“その感情”に気付かない振りをして、彼を励ますために口を開く。 「レッドさんらしくないですよ?…勇気を出してみたらどうですか?」 「……え?」 まさかオレに励まされるとは思っていなかったのだろう。彼は不意を突かれたようにハッと顔をこちらへ向けた。 彼の方が年上だけれど、なんだかそんなところが可愛らしくて、オレは優しく諭すように言葉を紡ぐ。 「振られる。なんて、告白する前から決め付けてちゃいつまで経ったって恋なんて出来ませんよ? …まずは自分から一歩踏み出さないと」 「ゴールド…」 「ね?いつものレッドさんらしく、まずは気さくに話しかけてみたらいいんじゃないですか?上手くいけば、一回くらいならデートに付き合ってくれますよ?」 「…お前、最後の一言は余計だぞ」 「相談に乗ったんですよ?これくらい言ったっていいじゃないですか」 「そうだけどさ…。まあいいや」 「善は急げ!ですよ。今から告白しにいったらいいんじゃないですか?」 「そうだな…よっし!」 ふっとさきほどの辛そうな表情を崩し、やっと笑ってくれた。 だが彼はまた真剣な表情に戻ったかと思ったら、今度はオレの両手を握り締めたまま顔を近付け、 「ゴールド。俺と付き合って下さい!」 そう言い放った。 それと同時に、唇に柔らかいナニかが当たる感触がした。 (弾けたいちごの淡い恋) パチパチ弾けた少年の恋は、まだ始まったばかり |