※ついったでRTされた緑金吸血鬼パロ
※グリーンが吸血鬼設定
※描写はありませんが、一応恋人同士です





「…っ!……いっ」

「…はっ、……ん」


肉を断つぶつりという鈍い音が首元から聞こえ、続けて血を啜る音が脳に響き、オレの意識は揺らいだ。
力が抜けその場へずるずると座り込むオレを抱き込み吸血を続ける男は、俗に言う吸血鬼であり、ゴールドの知り合いでもあるグリーンだった。

いつの頃からかは忘れてしまったが、満月の夜になると必ず自分は彼に吸血されていた。
彼が吸血鬼だったことに最初こそ驚いたものの、思えば納得するには十分すぎる状況が、その時から備わっていたと思う。


―『満月の日は絶対に会いに来るな』


そう釘を刺されていたにも拘らず、オレはある日の満月の夜に彼のいるトキワジムを訪ねた。
ジムの扉をくぐりジム内を見回すが誰もおらず、それでもオレは明かりが点いていることから誰かがこの中に居るのだろうと、万が一の時の為、と警戒を高め足音を立てぬ様用心しながらジムの奥へ向かって歩み出した。


『グリーン…さん……?』


このジムの主の名を呼び掛けてみるが、呼び掛けに応える人はおろか人がいる気配もは無い。
ただの消し忘れだったのか、と警戒を解き踵を返そうとした時、身体がナニかにぶつかった。


『っ!? ……いぁぁっ!!』


反射的に振り向こうとしたが、首筋に噛み付かれた痛みと血の抜ける感覚を認識すると共に、オレの視界はブラックアウトした。


そして目が覚めたオレの目に最初に写ったのはグリーンさんの申し訳無さそうな顔だった。
それから、彼が吸血鬼であることやまだ力を抑えることが出来ないので覚醒する満月の夜は一人で過ごすこと、そこに運悪くオレが訪問してしまったので、欲望の赴くままに血を貪ってしまったこと。そして吸血されてしまった人間はその吸血鬼にマーキングされ、その吸血鬼に血を捧げる“餌”になってしまうこと。


―『……すまない』


その時の彼の悲しそうな顔が今でも顔にちらつくからなのか、オレは吸血されたあの日から満月の日の夜は彼に吸血される為の“餌”になっている。


















「んっ…グリー…さ、…これ以上は……オ、レっ…!」

「っ…わり。大丈夫か?」

「ええ……。っなんとか…」

「待ってろ。今傷口塞ぐから…」


血の気が引け体温が下がり、意識が朦朧としはじめる寸前にこれ以上は限界だと知らせるように彼の服を握りしめると、彼は血の味をしっかりと味わう様にゆっくりと口を離した後、未だ血が流れ続けるオレの首筋の傷をべろりと舐め上げた。

常軌を逸した存在である吸血鬼は、これまた常軌を逸した能力を持っているらしく、彼が舐めた首筋の傷はあっという間に塞がった。


「…ゴールド……」

「……ん…んぅ…」


傷が塞がったことを確認すると、有無を言わせない速さで彼は唇を重ねてきた。
オレもそれに応えるように、彼の首へ手を回して唇を開き、彼の舌を受け入れ互いに絡め合う。

絡み合う舌に彼の歯が当たるが、さきほど自分の首の肉を断つほどの鋭い犬歯は無くなり、人間の歯に戻っていた。
そこで初めて、今回の彼の吸血鬼化が解けたのだと確認できるのだ。


「…っは、……」

「?…どうかしたか?」

「いいえ。なんでもありません」

「変なやつ…」


唇を離して見つめた彼の瞳の色も、新緑の様に深い緑ではなく、いつもの黒みがかった琥珀の輝きを灯していた。
彼の名前を現す緑の瞳も好きだが、それと同時に彼が異形のモノであるという認識を強く持ってしまうので、オレは敢えてその瞳が好きだと伝えたことは無い。


“彼が好きだ”


ただ、そのことが揺るがなければ、それでいいのだ。


「グリーンさん……」

「!? …どうしたんだよ?今日はいつもよりも素直じゃねぇーか」

「一言余計ですよ!…ただ、幸せだな。って思ったら急に甘えたくなりました」

「っ!! …嬉しい事言ってくれるじゃねぇーか」


自身の叙情的な考えに顔が赤くなり、オレはそれを見られないように彼の胸へ飛び込み抱き付く。
彼はそんな自分の反応に驚いていたが、やがてオレと同じように背中へ手を回し、オレ達は静かに互いの体温と鼓動を感じ合った。

例え始まりが歪だったとしても、今が幸せであればそれでいい。
彼が傍にいてくれれば、それでいい。

彼が、オレを愛してくれるなら。それで。



(滲んだ愛。)



オレは初めて、“愛”を知った。