「ひぅっ!!」 「あぁ、ごめん。びっくりしたかい?」 キスに意識が全て持っていかれそうになった時、不意に臀部を撫でられて思わず上ずった声が上がる。 シゲルさんはそんな反応に動じることもなく、臀部をするりと撫で、履いていたハーフパンツと下着を脱がせた。 そしてリードを引く手はそのままに、もう片方の手で机の引き出しを漁ると、中から透明な液体が入った小瓶を取り出し、中の液体をなんの宣言もなしにオレの下半身へ零した。 「今日はちょっと我慢がききそうにないから、下だけしか弄らないから」 「うあ…やぁ、ああっ!! シゲルさ、」 彼の言う通り、今日はよっぽど余裕が無いらしい。秘部を押し拡げる指が内部を性急に掻き回す。 指に纏わりついた潤滑液らしきものが、ぬるぬるとした感触がぞわりと全身を震え立たせる。 そして前立腺を強く刺激すると膝ががくがくと笑いだし、オレはくたりとシゲルさんに凭れかかり、彼が着ている白衣をぎゅっと掴んだ。 「あ、あ、あ、あ、……んぁぁっ!! あ、やぁっ!!」 「気持ちいいんだね?前もこんなに勃たせて…。ほら、こんなに先走りが溢れて…」 「ひっ!…言わ、なくて、いいですか…らぁぁっ!! あ、あ」 パンパンに勃ち上がり先走りの液を滴らせているのなんて、言われなくたって自分が一番分かっているのだ。 身体と鼓膜を同時に攻められ、正気を保つことだって精一杯なのに。 生理的な涙と、飲み込むことが出来ず垂れた唾液が混ざり合って顔もぐちゃぐちゃになってしまった。 シゲルさんはそんなオレの痴態を見て、うっそりと笑った。 「そろそろいいかな?……いくよ」 「え………、あああああっ!!」 今まで中で暴れていた指が引き抜かれたかと思うと、今度はそれ以上の質量を持ったシゲルさん自身が挿入された。 簡単に慣らされただけの秘部は押し入って来たものを押し出そうとするが、彼の膝に跨ったこの態勢のせいか、自身の体重の圧力がかかりシゲルさんのモノがずぶずぶと入っていく。 「〜〜〜〜〜っあぁぁぁっっっ!!」 「この態勢だと、いつもより深く入るね。どう?気持ちいい?」 「あぅっ!…あ、ふか、っい…や、うごか、ないでっ、下さっ!!」 「ケンタ君の中、きゅうきゅう締め付けて…。とっても気持ちいいよ」 「ふぁっ!あぁ…ああっ!!」 腰を掴んだシゲルさんが身体を揺する度に最奥を穿たれ、オレの口からは甲高い嬌声がひっきりなしに漏れる。 「ケンタ君…」 「ぁっ!…ん、んんぅっ!!」 前立腺を擦られ身体を弓なりに反らしていたその時、リードをくん。と引かれ唇を重ねられた。 その間にも彼の自身は最奥を突き、声にならなかったくぐもった嬌声と結合部から響く水音が空気を振動させる。 「あ、シゲルさ、…オレもう…」 「ぼくも、もう…。一緒に、」 「は、…い。い、っしょに…あぁっ!」 もう限界だと伝え、彼の首へ手を回すと彼も笑って今までよりも激しく強く律動を始めた。 「シゲル、さ…好き、好きで、す…」 「ぼく、も…好きだよ…ケンタ」 「ひぁ、あ、あぁぁぁぁぁっ!!」 「…っ!」 互いに強く抱き合い、果てる。 自身が放ったモノはシゲルさんの服へ、シゲルさんが放ったモノはオレの最奥へ放たれた。 オレは射精したことによる解放感と疲労から、意識をゆっくりと手放した。 「ケンタ…」 意識を失い、自身に凭れかかりながら静かに寝息を立てる彼の唇へキスを落とす。 未だに挿入されたままの自身を彼の中から引き抜くと、放ったモノがドロリと流れだした。 流れ出したそれに、僅かな支配欲と独占欲が満たされた気がしてぼくはくすりと微笑んだ。 すると、首に嵌められたままの首輪が、きらりと光る。 それを手で軽く撫でながら、これを初めて嵌めた時のことはとっくに忘れてしまったが、よく彼はこれを付けることを拒否しないな。とシゲルは今更ながらに感じた。 本来なら、こんなものを付けて行為に及ぶのは一部のそういった性癖をもつカップルだけなのだから、彼は賛成しないだろうと思っていた。 だから、本当に付けてきた時は心底驚いた。 そんな従順な彼を見て嗜虐心がくすぐられた時、自分にそんな性癖が備わっていたことにも驚いたのだが。 案外、彼には被虐的な思考が備わっているのかもしれない。 彼はまだ気付いていないだろうが、首輪を付けるように強要し行為に及んだ時、いつも以上に感じているのは彼の方なのだから。 リードを引いた時に見せる、あの堕落したような表情は、自分が調教したからではない。もっとも、彼は自身のしている表情にさえ気付いていないと思うが。 「ぼく達は相性が良いんだろうね」 彼に確かめる訳でもなくぽつりと零した呟きは、夜の闇へ溶けて消えた。 (強制されている訳でなく) 彼の意志なのかもしれない。 |