「ただいま。コトネ、いい子にしてた?」
「ただいま。ソウルは迷惑掛けなかったか?」
あの連絡から一時間もかからない内に二人は帰ってきた。
本当はもう少し早く帰ってくる予定だったらしいが、研究資料を纏めたりするのに手間取ってしまったらしい。
「おかえり。皆オレの手伝いをしてくれて助かったよ。な、みんな」
「うん。私は野菜を切ったんだよっ!」
「僕は盛り付けっ!」
「…ひき肉こねた」
一人一人褒めてくれとでも言いたそうに、矢継ぎ早に手伝った内容を話していく。
「そっか…。コトネ、ありがとうね」
「ソウルも。ありがとな」
それを聞いたクリスとシルバーは、くしゃりとコトネとソウルの頭を撫でた。
褒められたことがよっぽど嬉しかったのか、二人の顔は恥ずかしそうにはにかんでいた。
「さ、二人とも帰ってきたことだし、メシにしようか」
「「はーいっ!!」」
「クリスとシルバーはまず手を洗ってこいよ」
「はいはい…」
「フッ…まるで母親みたいだな」
「あんだとー!」
「冗談だ」
「じゃあ、いただきま…」
「あっ!ちょっと待った!」
皆が席に着き夕食を始めようとした時、ハンバーグに手を伸ばす三人に、オレは待ったをかけた。
「「なに?ゴー兄ちゃん」」
「………」
「このハンバーグはちょっと特別な作り方をしてあってなー。お前らが食べる前にオレが食べ方の手本を見せてやるから」
腹ペコで目の前にご馳走がある状態で待ったを掛けられたことに不満気味の三人(ソウルからは無言の圧力)を宥め、オレは目の前で湯気を立てているハンバーグの中心にカチリ。とナイフを立てた。
ボコッ!
「「うわっ!」」
「きゃっ!」
ナイフを立てたところから噴き出したソースに、三人は声を出して驚いていた。
その反応を見たオレ達三人は、悪戯が成功した子供の様にケラケラと笑い合った。
「大成功〜っ!」
「誰だって初めはビックリするわよね」
「俺も最初はえらく驚いたからな…」
「「ゴー兄ちゃんなにしたの…?」」
よっぽどビックリしたのだろう。若干椅子を引かせたヒビキとコトネが問い掛けてきた。
「これがオレの“グレン風火山ハンバーグ”!噴き出すソースが火山みたいだろ?…でも、ビックリさせて悪かったな」
「これが作れるのはこの三人の中じゃゴールドだけなの。ねぇゴールド、今度は私にも作り方教えてよ」
「俺にも教えてくれないか?」
「いいよ。てか、今ので食べ方分かったか?ソースが噴き出すから、気を付けてくれよ。ってことを言いたかったんだけど…」
未だにフリーズしている三人に声を掛けると、ぴくりと肩を震わせ、そして、
「「すっご〜いっ!」」
「ビックリした…」
「ねぇ!! 私もビックリしたよ!ヒビキ君のお母さんのハンバーグと全然違うんだもんっ!」
「僕もっ!ゴー兄ちゃんすごいっ!!」
目を爛々と輝かせて、三人は興奮気味に感想を捲くし立てる。
興奮気味のままそれぞれのハンバーグへナイフを立て、噴き出すソースを見てはしゃいでいた。
「はいはい、そこまで。まだやってないことが一つだけあるだろ?」
ある程度遊ばせておいてから、未だ興奮冷めやらぬ状態の三人を落ち着かせて、オレは両手をパンッ、と合わせる。
「いただきますしようか」
オレのその言葉を合図に、全員が手を合わせて、
(「いただきますっ!!」)
今日の夕食は、不思議といつもより美味しい気がした。