「レッド!」

「…グリーン」


シロガネ山から下山して数ヶ月。俺は毎日のように隣に住む幼馴染兼ライバルのグリーンと挨拶を交わす。
いつもと変わらない明るい声と笑顔で挨拶をしてくるグリーンと対照的に、俺の顔は少し引き攣ってしまう。
しかし、相手のグリーンには一度も気付かれたことは無い。


「おはよう。今日は何か予定あるのか?」

「いや、別に何も無いけど…」

「そっか。じゃあさ、今日は俺と一緒にトキワジムまで来てくれねぇか?ゴールドやクリス達が顔見せに来るし、アイツらとバトルもしたいんでね」

「………」


正直、気分が乗らない。
別に、ゴールドやクリスが嫌いなわけじゃない。寧ろアイツらは大好きだ。

本当は、


「おーい。レッド? どうしたんだよ」

「なんでも、ない…」

「そっか。それならいいけど。で、来てくれんのか?」

「いいよ、俺もアイツらと久しぶりに戦ってみたいし」

「よし決まり!じゃ、行こうぜ!」


そう言ってグリーンはジムへ向かうために1番道路へ向かって歩き出した。
俺はその後ろをゆっくりと追いかけていく。


本当は、グリーンと距離を置きたいだけ。


俺は、グリーンが好きだから。
でも、それは許されないことだから。


堪えるしか、気持ちを隠すしかないんだ。
それに俺自身も、今のこの関係を壊したくないと思っているから。
友として隣で笑い合い、ライバルとして競い合い。


そんな誰もが持つ“友情”という絆を、大切にしたいから。


彼の背中を見つながら、拳を強く握りしめる。
そうでもしないと、きっとこの気持ちは弾けてしまうだろうから。


彼と俺の未来と、笑顔を守る為、俺は今日も



(嘘を吐く)



『俺達は親友だろ?』


そう言って笑う彼の為に、この心に。