※Pixivレッドに厳しい



「クリスッ!どこ行ったんだよっ!? おいっ!!」

木漏れ日が差し込む森の奥へ向かって、ゴールドが駆けていく中。張り上げた大声に驚いた鳥ポケモン達が、騒がしい音を立ててその場から去っていく。
ゴールドは、幼馴染のクリスを探していた。

―『クリスがいなくなっちゃったのよ。どこを捜しても、ポケギアに連絡を入れても出なくって…』

数時間ほど前にクリスの家に呼び出された時に聞かされた話が脳裏を過る。話を聞いたところ、最近クリスは様子が可笑しかったらしい。急に泣いたり、怒ったり。笑うことも少なくなり、最近では表情さえ変えなくなってしまうほどだったそうだ。最近は彼女と顔を合わせることが無かったゴールドにとって、あの活発な性格のクリスが笑う事さえしなくなったと言われても、想像のしようがなかった。それでも、彼女の母親の真剣な顔を見たせいか、ゴールドは心の奥で嫌な予感を感じ取った。

―『オレが、クリスを捜してくる』

そんな思いを払拭したくて、ゴールドは挨拶もそこそこに、クリスの家を飛び出したのだ。だけれど、肝心のクリスがどこにいるのか分からない。クリスの行動範囲はゴールドとあまり大差がないため、ゴールドはジョウト、カントー地方をしらみつぶしに捜し歩いたのだが。

「はぁ…っ、はぁ…。どこ、行ったんだよ、クリス……!!」

上がった息を整えながら、ゴールドは傍の大木に凭れかかり、流れる汗を拭い頭を抱える。クリスは、どこにもいなかった。それどころか、クリスを見たという人にさえ会うことが出来なかった。カントーにも、ジョウトにも、“誰一人として、クリスという人物の存在を知る人物”がいなかったのだ。彼女とバトルし、その力を認めたジムリーダーでさえも、クリスという存在を知らなかった。

「(どうなってるんだよっ!? ……クソッ!)」

最後の手掛かりであるここ、認められた者しか通ることの出来ないシロガネ山へ足を運んでも、結果はこの通り。ゴールドはクリスを見つけられないでいた。

「(……クリス)」

ガサッ ガサッ

「っ!? 誰だ……っ!!」

凭れかかった大木のすぐ近くで、草同士が擦れる音がして、ゴールドは思考を拡散させた。野生のポケモンなら、と腰に下げていたモンスターボールへ手を掛け、音の正体を見極めるが、ゴールドの目の前には、ポケモンではないものが映った。

「……レッド、さ、ん……?」

「………」

眼前に広がる赤。外へはねた茶色の癖毛。その人物は、ゴールドがよく知っている人物にとても似ていた。だが、呼びかけても彼からの返事は無い。
彼はレッドではないのだろうか?否、レッドなのかもしれない。…否、レッドだ。
ゴールドは心の何処かでそう、直感した。

“この世界の『レッド』ではないけれど、彼も『レッド』なのだ”

「オレはゴールド。クリスを、…オレと同じ歳位の女の子を捜してるんだ」

「………」

気が付けば、そう口に出していた。キミは誰とか、どこから来たのとか、そんな質問をしている暇はない。彼を見た瞬間、全身がゾワリと総毛立った。そんな嫌な感触を振り払いたくて、異様な存在感を放つ彼へ問い掛ける。相変わらず彼から返事は無かったが、彼は顎をくいっと動かし、シロガネ山の奥へ歩き出した。

『ついて来い』

表情が、仕草が、背中が、そう語っていた。

「……っ」

何が起きているのか。そんな不安を胸に、ゴールドは彼の後ろへ着き、シロガネ山へ向かって歩き出した。



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