※GB(旧世代)組





「こんにちわーっ!!」

「…どうも」

「よぉ!ゴールドにシルバー。よく来たなっ!」

「二人とも寒かっただろ?早く中に入れよ」


今日は待ちに待ったクリスマスイヴ。
ゴールドとシルバーは、レッドの家で開かれるクリスマスパーティに招待され、ジョウトからカントーのマサラタウンまで、雪が降る中やって来たのだった。
玄関の扉を元気な声と共にノックすると、扉が開くと同時にレッドと彼の幼馴染のグリーンが二人を出迎えてくれた。
二人に促され、ゴールドとシルバーは寒い外から暖かい室内へと移動する。

二人に案内された先の部屋には、すでに豪勢な食事がテーブル中所狭しと並べられており、その中央にはクリスマスケーキも用意されていた。


「うわぁ〜!おいしそうっ!!」

「だろ?俺の母さんが作ってくれたんだ!」

「…そういえば、レッドさんのお母さんはどうしたんですか?」


目の前に置かれたケーキは、レッドの母親の力作らしく、とても丁寧に作り込まれていて、美味しそうだ。
しかし、ケーキを作った本人がいないことに疑問を持ち、ゴールドはレッドに問い掛ける。


「母さんは隣のグリーンの家でオーキド博士たちとパーティをやってるよ。『子供は子供、大人は大人。その方が楽しいでしょ?』だってさ」

「なんか逆に気を使わせちまったみたいだな…」

「気にすんなって。今日はまだイヴだぜ?クリスマスは明日もあるんだからさ!!」


グリーンが申し訳なさげに言うと、レッドは特に気にした素振りも見せなかった。
多分、予めそう予定を立てておいたのだろう。


「だから、今日は子供だけで楽しもうぜ!! それより、ゴールドの方は大丈夫なのか?」

「オレの家も明日パーティなんです。クリスやシルバーも加えて、ウツギ博士の研究所でやる予定なんだ」

「なんだ。それならいいや」

「……ゴールド、そのクリスはどうしたんだ? さっきから姿が見えないんだが…」

「えっ?……」


そういえばクリスの存在をすっかり忘れていた。
シルバーに問われ意識しなければ、ずっと忘れたままだったかもしれない。
当初は三人でマサラタウンへ行く予定だったのだが、クリスの家へ行った時、彼女の母親からクリスは出かけたとの旨を聞いていたので、てっきりもうレッドの家へ着いているのかと思ったのだが。


まだ、来ていないのだろうか…?


「あぁ。クリスならもう来てるぞ。二階でブルーと何かやってるみたいだ」


ゴールドとシルバーの会話に割って入ったグリーンが、人差し指を二階へ向けて話す。
それとほぼ同時に、二階からけたたましい騒音がした。


「いやぁぁぁっ!! 止めて下さい、ブルーさん!!」

「これくらいで根を上げてどうするのっ?! 今日はクリスマスなのよ!少しはおめかししなきゃっ!!」

「それでも嫌ですーーーっ!!」


その騒音に動きを止めた四人の耳に次に入って来たのは、クリスと呼ばれる少女の悲鳴とドタン、バタンと響く足音。そして、ブルーと呼ばれる少女の大声だった。


「なんか、すごいことになってないですか?」

「そう、…みたいだな」

「おーい。大丈夫かぁ?てか、もうゴールド達来てるぞーーっ!」


二階から漂う何とも言えない雰囲気に下に残された四人は顔を見合わせ、汗を垂らす。
そんな中、レッドは二人(主にブルー)に向けて、ゴールド達の来訪を知らせる。
その大きな声が二階に届いた瞬間、今まで騒がしかった二階の喧騒が静まり、


「ウソッ?! 分かった、今すぐ行くーーっ!! ……ほら、クリス行こう!!」

「いやーーーーっ!!」


そのレッドの声に応えるように、二階に続く階段を駆け足で駆け下りてくる足音と共に、まずは一人の少女が現れた。


「お待たせっ!! よく来たわね!ゴールド、シルバー」


そういって二階から慌ただしく登場したブルーは、サンタのような衣装に身を包んでいた。


「こんばんはっ、ブルーさん!どうしたんですか?その服…」

「この服?これはね、私のお母さんが今日の日の為に、って作ってくれたものなの!可愛いでしょっ!?」


そういいながら、ブルーはその場でくるりと一回転する。
その動きに合わせて、スカートの裾がふわりと揺れた。


「ええ、とっても!」

「クリスの分も作ってもらったから着せたんだけどね…。クリス!いい加減観念しなさいっ!!」

「いやですっ!! いやっ!!」

「大丈夫だって言ってるじゃないっ!!」

「でも…!!」

「あ〜〜〜、もうっ!いいから、来なさいっ!!」

「あっ…!!」


未だにこちら側に姿を見せず、階段で立ち止まっているらしいクリスにとうとうブルーが痺れを切らし、クリスの腕をぐいっと引いた。
それにつられるように、クリスはよろめきながら姿を現した。


「うわぁ〜〜〜っ!!」

「ん……」

「おお〜〜!!」

「へぇ〜……」


レッドやゴールドはその姿に驚きと好奇心の混ざった声を上げ、グリーンとシルバーは珍しいものを見たとでも言いたそうに目を見開いた。
クリスは普段はスパッツを着用しているので、今着ているブルーと同じサンタの衣装。つまり、スカートを履いている姿はとても新鮮であった。
本人もそのことを分かっているので、先程から心もとなさそうにスカートの裾を両手で掴んで落ち着きなさげにしている。


「どうよっ!可愛いでしょ!?」

「うん!! …なぁクリスっ!」

「…な、何?!」


ゴールドはえへん、と胸を張っているブルーの横にいるクリスに唐突に近付き、声を掛けると、


「いつもと違う格好だけど、スカートもその衣装もとっても似合ってるよ!!」

「!? …あ、…ありがとう……」

にっこりと笑顔たっぷりにそう告げた。
それを聞いたクリスの顔は、見る見るうちに赤くなっていき、お礼を述べる声も最後の方はとても小さくなってしまっていた。


「クリス…」

「シルバー…」

「俺もゴールドと同じだ。その…、よく、似合っている」

「ありがとうっ!! 二人共!!」


シルバーはそれだけ言うとフイッ、と顔を逸らしてしまったが、クリスにはそれがお世辞ではないことが分かっていたので、それ以上は何も言わなかった。


「そうそう!よく似合ってるって!……所謂、『馬子にも…』いっ!?」

「そういう意味じゃない!…まぁそれはさておき。クリス、よく似合ってるぞ」


レッドが何か失礼なことを言いそうになった時、横にいたグリーンが彼の足を踏むことで何とか制した。
足を抱えて蹲るレッドを尻目に、グリーンもクリスの衣装を褒めた。


「レッドさん、グリーンさん…。ありがとうございます!! ブルーさんも、ありがとうございました!!」

「だから言ったじゃない!私の目に狂いは無いって!」

「そうでしたね」


くすくすと笑い声が部屋中に響き渡る。
そんな中、いつの間に復活したのか、クラッカーを人数分用意したレッドが、咳払いをした。


「よし!全員揃ったことだし、そろそろパーティを始めようぜ!! はい、クラッカー」


全員にクラッカーが行き渡ったことを確認し、それぞれが顔を見合わせ、


「せーのっ!!」



(「聖なる夜に、乾杯!!」)



君と迎えるホワイト・クリスマス!!


(Side.ユウハル)