これの続き





「……はい?」


今、シゲルさんはなんて言ったんだ?

彼の、ベッド…、だって!?


「シゲルさんの、ベッド…?」


聞き間違いだろうと思い、一応聞き返してみる。
オレの引き攣った笑顔に気付いていないのか、シゲルさんは先程の笑顔のまま、話し続ける。


「そう。寝る前にも話を聞きたくて、あらかじめぼくの部屋へ通しておいたんだけど、キミ寝ちゃってたから…」

「はぁ…」

「本当はちゃんと用意しておいたベッドに移したかったんだけど、ぼくとキミは背丈があまり変わらないだろ?だから、移すのは無理だと思って、ぼくも同じベッドでそのまま寝たんだ」

「いや、シゲルさんはそっちの空いたベッドで寝れば良かったんじゃ…?」


そうだ。何もオレとシゲルさんが同じベッドで寝る必要なんてどこにも無い。
シゲルさんのベッドを占拠しておきながら、オレはもっともな提案をした。


「……あぁ、……その手もあったか」


彼はふと思い出した様に、ぽん、と手を叩いた。

つまり、ほぼ無意識でオレと一緒のベッドに横になったっていうのか?!

この人は、天然なのだろうか?


「でも、狭くはなかっただろう?別に気にすることじゃないさ」

「(オレは気にしますっ!!)」


駄目だ、この人は天然なんだ!
朝から美形のドアップを見せられた自分の身にもなってくれ!!


「それより、朝と言っても時間的にはまだ早いじゃないか…。もう一眠りしようよ」

「え……っ?!」


グイッ、と腕を引かれ、オレはまた暖かいベッドの中へ戻された。
驚くオレを余所に、シゲルさんは布団を互いの肩まで掛け、すでに意識は夢の中へ入って行きそうだとでも言いたそうに、目蓋が閉じかけられていた。


「ちょっ、シゲルさんっ!?」

「キミも昨日は疲れただろう? だったら、もう少し寝ていた方が……いい……」


オレの問いかけに答えることもなく、すぅ、と瞬く間に彼は夢の中へ旅立ってしまった。
残されたオレは、眼前に迫った彼の整った顔を見ないように逸らそうとするが、


「……!?」


いつの間にそうなっていたのだろう。
腰回りに締め付けられたような感じがし視線を落とすと、彼の両腕が自分の身体をがっちりと抱き込んでいた。


(オレは抱き枕じゃないっつーのっ!)


「や、やだ……っ!」


何とか彼の腕を解こうとするが、逃げることを許さないとでも言う様に、さらに抱き込まれてしまい、彼の整った顔との距離が、余計縮まってしまった。


「んぅ、…ケンタ、君……」

「っ!?」


顔を背けることも出来ず、泣きそうになっている時、急に名前を呼ばれて彼の顔を見遣るが、どうやら寝言らしい。

一体、なんの話だろう?


「キミの話…、面白い、ね…」

もっと…、聞きたい…、な。

キミを……知りた、い…」


「〜〜〜〜〜っっ!」


寝言に耳なんか傾けるんじゃなかった!

顔がとてつもなく熱い。
今のオレの顔は、相棒のバクフーンの炎よりも赤くなっていることだろう。
それぐらい、恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。

苦し紛れに顔を彼の胸元(正確に言うと布団の中)に埋める。
頼むから、今は絶対に起きないで欲しい。



(こんな顔、絶対に見られたくないっ!)



「おやすみ」どころじゃないですからっ!