※捏造注意!
※シゲル×ケンタ
※シゲルがセキエイリーグ敗退後設定





「こんにちはーっ!」

ジョウトリーグシロガネ大会出場後、オレはカントー地方へと足を進めた。
目的は勿論、ポケモン図鑑を完成させる為。
カントーへ行く際に、ウツギ博士へ連絡を取った所、


『カントーへ行くのかい?だったら、途中でマサラタウンという所へ寄ってごらん?そこにはポケモン学の権威とされるオーキド博士の研究所があるから』

『そうそう、ついでに、ケンタ君が今持っているポケモン図鑑もバージョンアップしてもらったらどうかな?』


こうしてウツギ博士の助言の元、オレはポケモン研究者で知らない者はいないとされる、オーキド博士の研究所へやって来たのだが。


「…あれ?……いな、い…?」


声を上げても足音一つしない。
研究所の中では、パソコンがデータ解析を進める音だけが響いている。


「…留守。なのかなぁ…」


それなら仕方がない。ここで待っていても意味がないし、また、日を改めてみるか。
そう心の中で決め、研究所を後にしようとくるりと背を向けた瞬間。


ドンッ!


「うわっ!」

「うっ!…いっ、…てぇ〜…」


研究所に入ってきた人物にぶつかり、オレ達は互いに床に尻餅をついた。
強かに打ち付けた場所を擦りながら、顔を上げると、視線の先には自分よりもいくらか年上の青年が同じくぶつけた場所を擦っていた。


「ご、ごめんなさいっ!大丈夫ですか?!」

「う…っ、なんとかね…。それより、ウチの研究所に何か用?」


先に起き上がったオレが謝りながらその青年に手を貸すと、彼はまだ痛む場所を擦りながら立ち上がった。
そうしてオレの顔を一瞥した後に、訝しげに訪ねてきた。


「キミ、この辺では見ない顔だね…。ジョウトの方から来たトレーナーかい?」

「そうです!オレはワカバタウン出身のケンタって言います!」

「ワカバタウン…。というと、ウツギ博士のところでポケモンを貰ったっていう少年って…」

「そうです、オレです!ウツギ博士に薦められて、今回図鑑のバージョンアップをしてもらおうと思って訪ねてきたんですが…」
「見ての通りさ。生憎おじい様は留守なんだ。ぼくは孫のシゲル。よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします!そうですか、留守なんですか…」


彼に差し出された手を取り握手しながら、オレはがっくりと肩を落とした。
オーキド博士は忙しい人だと、ウツギ博士から聞いていたから、大方予想はしていたが、運が向かなかったか。


「分かりました。また、日を改めて来たいと思います。それじゃ…、」

「待って」


博士が来るまでの間、この近くの草むらで野生ポケモンでも捕まえるか。
ぺこりと彼に頭を下げ、研究所の出口へ向かって歩き始めようとした時、不意に呼び止められた。


「…なんですか?」

「その、ポケモン図鑑を見せてくれないかい?少し、興味があるからね」

「いいですよ」


はい、と取り出したポケモン図鑑を受け取った彼は、真剣な表情で画面を見つめている。
やがて満足したのか、図鑑の画面を閉じ、オレに返した。


「うん。なかなかの出来だったね。ジョウトのポケモンはぼくもあまり詳しくはないから、勉強になったよ」

「そう言ってもらえると嬉しいです!」

「手持ちのポケモン達も、よくキミに懐いているし…。ポケモントレーナーとしてのレベルも高い」

「そ、そこまで言われると照れますよ…」

「ぼくも以前まではポケモントレーナーとして旅をしていてね…。それでも、ここまで育て上げているトレーナーはなかなかいないかったから、…」


なるほど。それでこんなにゴキゲンなのか。


彼の顔は先ほどと打って変わって生き生きとしており、とても楽しそうだ。
ポケモン研究家になる前の、トレーナーの頃の彼に会えていたら、さぞ熱いバトルを繰り広げることが出来ただろう。


「この後の予定は無さそうだね…。よかったら旅の話を聞かせてくれないかい? 話し終わる頃にはおじい様も帰ってくると思うから…」

「えっ?! そんなに長く居座っていても大丈夫なんですか?あの、…研究の方とかは…」

「今は急ぎの用事は無いから、気にしなくていいよ。それに、ぼくはキミが気に入ったんだ。もっと話がしてみたい」


ずずい、と彼に迫られ、真剣な顔つきで言われてしまうと、もうオレに逃げ場は無かった。

「…は、はい……」


彼の気迫に気圧され、つい、頷いてしまった…。



(「もう少し、ここにいてくれないかい?」)



分かりましたから、顔を近付けないで下さい!
(無自覚だから、性質が悪い!)