カランカランッ


『ありがとうございましたっ!』


軽快な鈴の音と明るいウェイトレスの声が店内に響き渡る。
どうやら、彼女たちは帰ったようだ。


「シュウ…、顔が真っ赤だよ」

「………うるさい」

「…素直じゃないね…」


ふぅ、と短い溜め息を吐きながら、カフェオレを飲む。
対面席には顔をオクタンのように真っ赤にさせたシュウが、帽子のツバを抓み、顔を俯かせてしまっている。

自分たちは彼女たちよりも一足先にこのカフェに来ており、声を掛けようと思ったが、先ほどのような会話が始まってしまったので、掛けるに掛けられなくなってしまったのだ。

結果的に、自分たちはヴァイスの告白を一部始終聞いてしまったわけで。


「(まぁ、面と向かって言われるよりも、堪えるだろう…)」


未だ俯いたままのシュウを横目に、チェレンはぼんやりと考える。


でも、自分でも驚いたくらいだ。


ヴァイスは他人を引っ張っていく明るい性格だが、割と冷めた部分もあるので、ああいう風に何か一つのことについて熱く語る。というのは本当に稀な事なのだ。


「良かったじゃないか、シュウ。ヴァイスにあんなに想われてて」

「そんなにオレをからかうの楽しいっ!?」

「あぁ、楽しいね」

「〜〜〜〜〜っ!!」


言い返す言葉もないシュウは、黙ってボクに弄られることが悔しいらしく、ぎりぎりと歯を食いしばっている。


「でも、本当に良かったよ。シュウだって分かるだろ?ヴァイスは滅多に好きだの言ったりしないって…」

「うん…。だからこんなに照れるんじゃないか!あ〜、これからヴァイスに会ったらどんな反応すればいいんだぁ〜〜!」


「普通にしてればいいんだよ」


うーん、と頭を抱え、今にも机に突っ伏しそうなシュウを見ていられなくて、ボクは彼にアドバイスする。


「ふ、つう…?」

「なにも気を張ることは無いじゃないか…。今まで通りでいいんだよ…」

「でも…」

「じゃないと、逆に怪しまれるよ」

「それは何としても避けたいな」

「ほらね…。だったら、この話は終わり。じゃ、ボクは行くから」

「待てよチェレン!」


ちょうど飲み物も無くなってしまったし、今日はこの辺でポケモンバトルをしてみよう。
頭の中でこれからのことをシュミレーションしながら、レジで会計をする。
後ろから慌ただしくついて来るシュウをちらりと見遣れば、未だに耳が赤くなっていて、僕はやれやれといったように緩くかぶりを振る。


「(…まったく、これじゃあヴァイスの方がまだ大人だね)」


はぁ、と溜め息を吐きいて、こめかみを抑える。

幼馴染の恋。
応援してやりたいのはやまやまだけど。



(背中越しの反応)



恋人同士になるのはいつになることか