「ねぇ…、ヴァイスはシュウのどこが好きなの?」

「うぐっ!?」

「あわわ!大丈夫、ヴァイス〜〜?!」

「ベルがいきなり変な事聞くからでしょ〜っ!? げほ、…はぁ…あ〜、びっくりした…」


平日の昼下がり。


私と幼馴染で親友のヴァイスはここ、シッポウシティのジム横にある喫茶店“カフェ ソーコ”でお茶をしていた。
そんな中、ふと今思い立ったことをヴァイスに言った途端、彼女は飲んでいたサイコソーダを口端から勢いよく吹き出した。

げほげほとむせる彼女を対面の席から心配したが、彼女は私を見据えて少し赤い顔で言った。


「なんでその話題なのよ!今の話の流れ的にそれは無いでしょ?!」

「それはそうだけどさぁ〜。だって、久しぶりに女の子二人っきりになったんだよ?そういう話で盛り上がりたいんだもんっ!」

「…はぁ……、分かったわよ。話せばいいんでしょ、話せば…」


ぷぅ、と頬を膨らませて不満さをアピールすれば、彼女はこれ以上話題を逸らすのは無理だと悟ったのか、サイコソーダが少し残ったグラスを握りながら、ぽつりと話し始めた。


「気が付いたら好きになってたから、『どこが好き?』って聞かれると回答に困るなぁ…。でも、敢えて挙げるとすれば、“夢があること”と“優しいこと”、かなぁ…?」

「ゆ…、め…?」

なんだかあっさりと答えられてしまい、拍子抜けしてしまった。


「でも、それってヴァイスも持っているでしょ?」

「いや、別に」

「えぇ〜〜っ!? じゃぁ、どうして旅に出ようと思ったの?」

「夢がないから、だよ。だからこそ自分の世界に閉じこもるだけじゃなくて、新しい世界を見て、心を育ててみたいと思ったんだよ!」


へへ、と彼女は恥ずかしそうに笑う。

ヴァイスに夢がないなんて、初耳だった。
びっくりしているわたしを余所に、彼女は話し続ける。


「まぁ話しを戻すけど…。最後に私がNと戦った後、二人で観覧車に乗ったのよ…。Nと乗った時みたいに、二人で」

「その時、『二人で一緒にNを捜して見つけよう!』って話になって、さ…」

「その時の真剣なシュウの瞳を見て、『あぁ…、私、シュウのこと好きだなぁ…』って感じたわけ」


つらつらと饒舌に語る彼女の顔は綻んでいて、見ているだけで私まで幸せになる。


「シュウも巻き込まなくても、私一人でNは捜せると思う。でも、シュウは文句の一つも言わずに、私の手を握って頷いてくれた…。私が初めて持った夢を、一緒に叶えてくれるシュウに、……私は、どうしようもなく惹かれたんだ…」


そう言って、残りのサイコソーダを煽ると、彼女はすくっと立ち上がる。


「さ、もう行かなきゃ!こうしている間にも、Nは遠くに行っちゃうかもしれないしね!!」

「えっ?! もう行っちゃうの?だったら私も……っ!」


私もグラスに残っていたミックスオレを煽り、彼女の後を追い、店を出て行った。


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