「…強かったなぁ…」


自分一人しかいない場所で、一人呟く。




















人が寄り付かないシロガネ山の最奥部に、その少年は突如として現れた。



―『キミもトレーナー?! だったらポケモンバトルしようよ!!』



挨拶もそこそこにいきなりバトルを開始され初めは困惑したが、慣れるのに時間はそうかからなかった。
互いのポケモンの力は五分五分。
どちらが勝ってもおかしくはない状況だった。


「(…そういえば、こんなギリギリの戦いをしたの、グリーンとのバトル以来な気がする…)」


バトル自体も久しぶりだったせいか、自分もポケモンもいつもよりバトルに熱が入っていた。
相手の手持ちも、自分の手持ちも互いに一匹となった。


「…お前、名前は…?」


その時、無性に少年の名前が聞きたくなった。
こんなバトルは最初で最後だろうと思ったから。
少年は急な質問にぽかんとしていたが、すぐに我に返り、目はこちらを睨み据えたまま、口に笑みを浮かべ、


「オレは、ゴールド!」


そう言った。

瞬間、彼の黒い瞳が、ギラリと音を立て、金色に光った。


気がした。


「……っ!?」


その光にゾクリとしたのと同時に、俺の相棒は地に伏した。



負けた。



そのあとのことはよく覚えていない。
気が付けば俺はシロガネ山の近くのポケモンセンターにおり、目の前からあの少年は消えていた。
不思議と悔しくはなかった。


寧ろ、嬉しかった。


「(…また、アイツと戦いたい)」


いてもたってもいられなくなって、俺は真夜中の空に向かって駆け出した。
光源が一切ない小道を、星が照らす。
けど、



(「星だって、お前の輝きには負けるよ」)



それくらい、お前は俺にとって強烈なヒカリを放っていた。



お題/モノクロ メルヘン『気障台詞5題』