※レンさん独白
※漫画版の家族設定










薄暗い部屋は嫌いだ。

日の光が差し込む暗い部屋は特に。

逆光で表情の窺えない、けれど自身に傲慢さを隠すこともせず罵詈雑言を浴びせる父のことを思い出すから。

完璧。それが父が自身の人生の駒として扱うレンに求めたもの。

不器用な自分はそんな父の期待にうまく答えることが出来ず、いつも仕置きだとばかりに平手が頬を打った。

痛む頬を押さえながら、いつまでも止むことの無い悪意の言葉を一身に受ける。

幼い頃の自分は、そんな父に応えたいと怯えながらも期待に添えようと一生懸命だったこともあったが、そんな感情はいつの間にか消えてしまった。

結局のところ、父はレンを自身を完璧と証明する為だけの道具としてしか見ていなかったのだ。

それを悟ってしまった。

レンを一人の人間として認め、愛してくれないのであれば、そこに親子と、肉親という関係はいらない。

あっても、無駄になるだけだ。

だから、そんな暗い想い出をフラッシュバックさせる薄暗い部屋が嫌いで堪らなかった。

けれど、今は違う。


「タイシ」


にっこりと、レンは笑みを零す。

その瞳に仄暗い光を湛えて、タイシと呼んだ金髪の少年を見つめながら。

レンの新しいおもちゃ。暗い部屋の中でもその輝きを濁らせることなく存在を主張する金糸の髪を撫ぜる。

太陽のように輝く三和の髪が、部屋に微かに差し込む日の光を浴びてより一層輝きを増している。

男にしてはよく手入れされた、さらさらと流れる髪を一房持ち上げて口付ける。


「この暗い部屋で、キミの輝きはどこまでもつのでしょうね?」


問い掛けるように、けれど答えなど分かり切っているような声音で言葉を紡ぐ。

暗い部屋を照らすその光に焦がれながら、自身の手で摘み取ろうとしているレンの歪んだ心は、ゆっくりと三和が崩壊することを望む。

そして、摘み取ろうとするレンに、三和がどう抗うのかを。

あんなに嫌いで堪らなかったこの暗い部屋が、狂気に満ちた遊戯場になることに喜びを隠そうとしないまま、レンは三和の首に掛けられた制服のネクタイを抜き取り、妖艶に微笑んだ。



(薄暗い部屋)



歪んだこの心満たして。



お題/モノクロ メルヘン『拉致監禁強姦』