※レン×三和です
※ヤンデレンさん(?)










「タイシ」


俺を呼ぶその声は、まるで呪詛のように俺の身体を縛り付ける。

その言葉と共に触れる掌はひどく冷たいくせに、その手が俺に与える熱はひどく熱い。

頬に触れ、唇を啄み、愛撫し、貫く。

でも、これは決して互いの合意の上で成り立っているわけじゃない。断じて、違う。

だけど、抵抗すればするほど、それ以上の快楽が俺の身体を蝕んで正常な思考を奪おうとする。

しかし目の前の漆黒と真紅に染まる男、雀ヶ森レンは、けれど快楽に溺れまいと抵抗する俺を組み敷きながら、優雅に微笑む。


「抵抗など、無意味なのに…。でも、それくらいの強い気持ちをぶつけてくれるのは気持ちが良いですね特に…」

「っ!うぁ!あ、あぁぁ、あっ!」

「君のように気の強い人を屈服させる時は、ね…」

「この……やろ……ぃあぁぁっ!は、あっ!」


律動を繰り返しながら、雀ヶ森レンは言葉を紡ぐ。

レンは自身の手で乱れる三和の頬をするりと撫で、精一杯意識を保とうとする三和に、けれどもその抵抗を愚かだと言い、三和の下腹に埋めた自身をさらに奥へと進め抉る。

無遠慮に奥へ進むソレが下腹の最奥を突くと、瞬間目の前の景色が明滅し、口からは飲み込めなかった唾液が零れ、引き攣った嬌声が溢れる。

三和のそんな反応に満足したのだろう。レンは律動を止めずに人の悪い笑みを浮かべ、ニヤリと嗤う。

レンの与える快楽に呑まれるのが屈辱で堪らない。三和は嬌声の合間に熱の籠った瞳でそんなレンをキッと睨み付け、悪態を吐く。


「いいですよ、その顔。屈辱で堪らないという感情がありありと出て。ひどく滑稽で、愚かで」

「うる……っせ!あ、あああ、はっ!」

「でも、君のその快楽に溺れる顔は、ひどく出来過ぎているんですよ。……何故、なんでしょうねぇ?」

「…どういう、……意味、だよっ」


そんな三和の視線をひらりと躱し、レンは尚も三和を言葉で詰る。

見下し、卑下し、貶める。その言葉の中に込められた悪意を快楽と共に享受するしか術の無い三和に、続けてレンが問い掛けた言葉に、三和の意識は瞬間にして冴えた。言ってほしくはない。けれど、奴は言葉にしてしまうだろう。

三和のささやかな願いは、けれども打ち消された。


「案外、櫂とデキてるんじゃないですか?」

「っ!ふっざけんな!お前、いい加減に……いぁぁぁぁぁっ!」

「なんてね、冗談ですよ」

「くそっ!…お前、……マジで許さね……、ひぁっ!」


レンが落としたその言葉が頭の中で反芻するのと同時に、三和は組み敷かれ貫かれている身体に鞭を効かせ、右拳をレンの頬へぶつけようとした。

だが、その三和の反応を確実に読んでいたレンが今まで以上に深く、三和の最奥を抉ってしまえば、三和の怒号は叫び交じりの嬌声に変わる。

最奥を抉られた衝撃で再び床に倒れこんだ三和を抱き込むように抱え、レンは激しい律動を繰り返しながら耳元でくすくすと嘲笑う。

完全に遊ばれたと気付いた三和が剣呑な表情で睨み付けてもまるで動じず。レンは三和の最奥を抉り続ける。


「タイシ、タイシ…」

「やめ、ろっ……、呼ぶな、呼ぶなって!」

「愛してますよ。三和」

「っ!? い、あ、あ、あぁぁぁぁっ……っ!」

「……っ」


先ほどよりも間隔の短い律動に、レンの限界が近いことを知る。

三和の名前を確かめるように囁くレンの声がひどく優しく、甘く響く。

その声音に引き込まれそうになる一歩手前でギリギリの意識を保っていた三和だったが、レンに最後に紡がれた言葉は、びっくりするほどに真剣な自身の名前で。

三和は、その言葉に引き摺られるようにして、果てた。

そんな三和に続くように、ワンテンポ遅れて、レンの方も三和の下腹の最奥へと自身の熱を放った。




















「タイシ」


彼を縛り付けるように、ゆっくりと、言い聞かせるように彼の耳元でその名を囁く。

あの後処理を行おうとするレンの目の前で、三和は意識を手放した。

力無くぐったりと肢体を投げ出す三和を起こす気も起きず、レンは簡単な処理を済ませてから彼の横に並ぶようにして身体を横たえた。

死んだように眠る三和の寝息を感じながら、彼の跳ねた髪を梳く。


「初めは、ただの興味からでした。でもね、今は違いますよ」


そう、初めはまさか自分がここまで三和に執着するとは思ってもみなかった。

あの櫂と同じ学校に通い、気難しい性格の櫂と連れ合っている唯一の人物として、興味があったので近付いただけ。

だが、今はどうだ。

こうして情事中に櫂の名を出し、彼との関係がこんな爛れたものではないと暗に確認するまでに、レンは三和に入れ込んでいるではないか。


「だから、離しませんよ。タイシ」


もう、間違えない。

一度手にしたものを失う辛さや怖さを、身を以て知っているから。

だから、逃がさない。


「君を僕でいっぱいにして、いつか、飼い殺してあげます」


小さな子供のように無邪気な笑みを浮かべ、けれども吐き出す言葉はひどく歪んでいるレンの言葉は、三和の耳に届くことなく明りの消えた部屋の闇へ消えていった。



(君の心と身体と未来を)



さあ、早く僕に堕ちて。