これ(企画提出文)の続き?
※アニメ43話後の捏造
※BD×アイチで若干背後注意!










『お待ちしておりました。マイヴァンガード』


うっそりと微笑みを浮かべながら、私は腕の中で静かな寝息を立てる少年の唇を塞いだ。
ぴたりと重ねた唇の隙間からは彼の吐息が微かに零れており、私はそれさえも喰らい尽くすように薄く開いた唇の間へと舌を侵入させた。


「ん……、…っふ、ぅ…」


微かに動く彼の舌に自身の舌をねっとりと絡ませれば、そこから快楽を拾い出したのか、腕の中の少年は艶やかな吐息を漏らして身を捩る。
そんな彼の初心で、けれど流されやすい幼い身体に歪んだ愛おしさが込み上げてくる。

本当なら、このまま彼の身体を暴き、二度と光の世界へ帰ることが出来ないようにこの空間へ閉じ込めておきたい。
しかし、それはそう簡単に叶うようなものではないことも私は十分に理解していた。

唇を離し、私の愛しき先導者、先導アイチの顔を見下ろす。
彼の唇は先ほどのキスのせいでお互いの唾液に濡れ、そして赤く熟れていた。

だが、彼が目覚めることは無い。
何故なら、今私の目の前にいる彼は精神だけの存在なのだから。

あちらの世界で眠りに就いた彼の意識、精神体だけをこの世界、惑星クレイに存在する国家《ユナイテッド・サンクチュアリ》の闇へ連れ込んだのは私だ。

彼を私に出会わせた黒き先導者、雀ヶ森レンと同じ力を持つ彼の意識を引いて来るのはとても簡単だった。意識が無い状態ならなおさらだった。
そして、彼をこの世界に引き込むことが出来たもう一つの要因がある。

それは、


『あの<ブラスター・ブレード>を裏切って下さり、本当にありがとうございます』


そう、昨日まで彼が使役していた聖騎士団を裏切ったこと。それが私にとっては身が震えるほど歓喜する出来事だった。
彼が今まで大事にし、またあの憎き存在でもあるブラスター・ブレード自身も彼に忠誠以上の感情を抱いていたことも知っていたからこそ、この裏切り行為は私に想像以上の喜びを与えたのだ。

櫂トシキとの蟠りで出来た闇を雀ヶ森レンの力によって覚醒させられたことによって、彼は完全に闇に染まった。
その瞬間から、彼は聖騎士団を先導する光の使者ではなく、漆黒の騎士団を先導する闇の使者となったのだ。


『あぁ…、今思い出すだけでも笑いが止まらない…』


彼の手から零れ落ちていく彼等の絶望した表情が脳裏に鮮明に焼き付いている。
中でもとりわけ輝いていたのは、かつて私とその名を争った勇気を纏った光の剣士の姿だ。

剣が求める勇気の力を揮えずに闇に堕ちた私が、初めてあの男に勝った。
憎き存在であるあの光の剣士が愛した彼が、あの男ではなくこの私、<ブラスター・ダーク>の力を求めたのだ。

初めて私達を使役し、勝気な少女を圧倒的な力で打ち負かし勝利した彼は、かつての仲間に見向きをせず“カードショップ PSY”を後にした。
その時に聞こえた彼等の悲痛とも取れる主君を呼ぶ声さえも、彼には届かなかったのだ。


『マイヴァンガード。この唇を初めて捧げた相手は、あの男でしょう?』


くくっと喉を鳴らして笑いながら、彼の唇を撫でて問う。

答える声など帰ってこなくても、全て分っていた。
この少年に初めて愛を囁いたのも、唇を合わせたのも、華奢な身体を抱き締めたのも全部、全部あの<ブラスター・ブレード>だということは。


『お前はそんなに沢山初めてをもらっているんだ。もう満足だろう…?』


(だから、この身体を初めて喰らう権利は私に譲ってもらおう)


声に出さずにそう宣言する。
瞬間、辺りの空気が私を刺し殺す勢いで吹き荒れた。

それはまるで、彼の、そして彼等聖騎士団の仲間の怒りを表しているかのようで聊か煩わしく思えたが、今この場所に、そしてあの世界にも彼等は居ない。
愛しき彼に触れる距離に、邪魔な存在は居ないのだ。


『大事な聖騎士が穢れていく様を、せいぜい指を咥えて見ているがいい…っ!!』


今度こそ耐え切れずに、私の口からは歪んだ笑い声が響き渡る。

今こそ、憎き聖騎士団に復讐する時が来たのだ。
彼らが壊れてしまうほど、私はこの少年を愛し、穢し、堕としてしまおう。



(ようこそ、漆黒が渦巻く常闇へ)



まずは甘美な口付けから始めよう