※ダイゴ×センリ
※四月馬鹿の残骸





「好きです、センリさん」


硬直した彼の身体を抱き締める。
あいにくと身長に差がないので、包み込んであげることは出来ないけれど。

けれど、彼がぼくの身体を抱き返してくれることはない。
ぼくの背中に手が回ったことは、今まで一度たりともないのだから。

そして、彼がぼくの告白に応えてくれたことはない。
なぜなら、彼には愛する人間がいるから。


「何回も言っているだろう。私は君の想いに応えてあげることは出来ないと」

「ええ」

「それなら、いい加減諦めたらどうなんだ?」


彼を抱き締めたままのぼくの肩に、彼の両手が優しく置かれる。
そうしてぐっと力を籠められれば、あっという間にぼくの身体は彼から離れた。

頬に当たっていた温かい温度が離れたことを寂しく思いながらも顔を上げれば、その視線の先には困ったように眉を下げるセンリさんの顔があった。
その表情はまるで言うことを聞かないで駄々を捏ねる子供に辟易している親のようで、少し心が痛む。
結局、ぼくはこの人には子供としてしか見られていないということなのだろうか。


「私は君の恋人にはなれない」


何度聞いたか分らない、彼の拒絶の言葉。

強く、しっかりと、そして凛とした声で、彼は告げる。
その言葉に嘘偽りはなく、愛する人間以外に愛を囁かないという確固とした意志さえも窺える。


「君は若い。その想いは、きっと…」

「違います」


彼の言葉の続きを遮るように、ぼくは言葉を発する。
ぼくは目の前の彼に、真摯に想いを伝えているのだ。
ぼくは彼に、そんな風に受け取ってほしくなかったのに。

ぼくのこの熱く燃える想いは、彼には届かないと分かっていても。

いつか彼が気の迷いなんて言葉を言わなくなるまで、
いつか彼が本当にぼくの想いを受け取るまで、ぼくは彼に愛を伝えるのだろう。

そうして彼が今度こそ、そういった言い訳をしないでぼくを拒絶するのなら、



(潔く、諦めよう)



そうして、次の一歩を踏み出そう。