※♂主の呼称は“シュウ”





「久しぶりに来たけど、やっぱり観覧車って楽しいね!」

「ホントだな!」


ポケモン図鑑を集める旅に出て数ヶ月後。少しばかりの息抜きと称して、俺とヴァイスはライモンシティにある遊園地の観覧車に乗っていた。

この旅の途中、プラズマ団という組織と一悶着あったけれど、俺たち二人を筆頭にして、チェレンやベル、ジムリーダーに四天王と、色々な人たちと力を合わせ、無事に組織の野望を打ち砕いた。

その時に出会った自分よりも年上の青年、Nは、その戦いの後に姿を消してしまった。


「(…そういえば、Nともこの観覧車に乗ったっけ…)」


あの時は突然「自分がプラズマ団の王様だ」って言われて、本当に驚いた。
思えば、初めて出会った時から、そんな素振りを見せていた様な気がするが。


「N、どこに行っちゃんたんだろうな…」


ふいに、言葉が口から零れた。

あいつがいなくなった時、素直に寂しいと思った。
結局はあいつも利用されていただけだったのだから。

ゲーチスがNに言った、「バケモノ」という言葉が、今でも俺の心の中にずっと居座っている。
どうしてあの時、無理矢理にでも手を取ってやれなかったのだろう。


「そうだね…。今頃、何してるのかなぁ?」


俺の言葉を拾ったヴァイスが、観覧車の外の景色を見つめながら、溜息交じりで呟く。


「もっと、話したかったな。ポケモンのことや、Nのこと、私達のことも」

「チェレンやベルとだって、きっと打ち解けられたかもしれないのに…」


俺もヴァイスも思いは同じ。
どうしても会いたくて、今でもあいつを探して、俺たちはイッシュ地方を旅している。

でも、どこにもNの面影は無くて。
早く会いたいと、心が急かす。


「俺達ばっかりなのかな…?こんなに会いたいと思っているのは…」


「そんなことない」


急にヴァイスの声音が強くなる。
それまで外に向けていた視線をヴァイスに向けると、彼女の眼はしっかりと俺を見据えていて、


「きっと、戻ってくるよ」


再度、今度は俺を見てハッキリとそう告げた。


「まだ、時間はかかるかもしれないけど、もう、一人きりには絶対にしない!」

「そ……うだよな!絶対に探し出して、今度こそ、本当の友達になるんだ!」


そうだよ、Nの最後に見たあの顔。悲しい顔。
もう、あんな顔は見たくない!


だから!

絶対に見つけるんだ!

そして、



(最大級の幸せと笑顔を、君にプレゼントするよ!)



だから、どこにも行かないで!!