※病んでる(?)レッド注意!
※『花扇』様との相互記念文!
※本人(羽宮)様のみお持ち帰り可





「なぁ、いい加減俺のこと好きになれよ」

「……お断りします」

「………」

「……ぃぁっ!!」


光が射し込まない、否、光源が一切無い部屋に閉じ込めた彼に語りかけてもいつもの返事しか返ってこない。
分りきっていたことだけれど、いつまでも自分のモノにならない彼の強い意志に腹が立って、俺は彼の傍まで歩み寄ると彼の前髪を掴んで視線を合わせる。
彼は髪を掴まれ引っ張られる痛みから目の端に少しの涙を溜めていた。

それに少し苛立ちが引き、俺は歪んだ笑みを彼に向ける。
そうして前髪を掴んでいた手を離せば、がくりと顔を下に向けて彼は項垂れた。

彼をどことも知れぬこの場所に閉じ込めたのはいつだったろうか。

記憶の糸を辿ってみるが、まったくもって思い出せなかった。
それほど昔の話ではなかった気がするのだが。

彼と俺の初めての出会いはシロガネ山での邂逅だった。
洞窟の中で何をするでもなく遠くを見つめている俺に、そこを訪れた彼がポケモンバトルを仕掛けたのが始まりだった。
結果は彼の勝利に終わり、俺は久しぶりに故郷であるマサラタウンへ帰っていった。

そこで出会ったのが二度目の彼との出会い。
どうやら彼は俺の母親はじめオーキド博士、そして幼馴染であるグリーンとも面識があると言う。
そこから俺達は少しずつ交流を始め、今の状態まで進展した。

といっても、先に健全な道を踏み外したのは俺の方。
気が付けば、俺は年下であり後輩でもある目の前の少年、ゴールドに恋をしていた。


『俺、お前のこと好きなんだ。だからさ、付き合ってくれよ』


いてもたってもいられなくて、想いを告げたのがつい最近。
初めから叶うわけないと思っていたからそれなりの覚悟をした上での一世一代の告白。
出来れば受け止めて欲しかったし、無理でも今までと変わらぬ付き合いをしていきたかった。

だが、


『…すみませんけど、オレ、“そういう趣味”無いですから』


侮蔑するような冷たい彼の視線が、俺の心に深く突き刺さる。
それと同時に子供だった俺の理性は簡単に崩壊し、嫌がる彼を力でねじ伏せこの場所に彼を監禁した。

この歪んだ生活を送る中、俺は先ほどのように何回も彼へ愛を囁いた。
けれど、彼は一度として俺の愛に応えたことは無い。

何度無理矢理唇を奪っても、身体を暴いても、彼はその矜持を崩すことは一度として無かったのだ。

太陽が皆の物であるなんてよく言ったものだと、俺はこの時ほど身に染みて思ったことはない。
それほどまでにゴールドのガードの固さは高かったのだ。

だが、それも今日でお終い。


「言ったでしょう?オレはレッドさんの想いには答えられません」


昔のことに思いを馳せていると、今まで俯いていたゴールドはその顔を上げて俺を睨み付けながら言葉を零す。
その瞳はやはり俺を拒絶する色を含んでいて、ちょっとやそっとじゃその色が濁ることは無いのだろうことを窺わせる。


「他に好きな奴がいるから、か?」

「いいえ。でも、オレは貴方の想いに応えることは出来ません」


「嘘吐き」


「…っ!? う、嘘なんかじゃないですっ!!」

「なぁ、お前の好きな奴ってさ、もしかして《   》?」
「っ!?」

「(やっぱりな…)」


尚も拒絶を続ける彼にその理由を聞けば、彼はいつもと同じ返答をする。
だが、今日はそれに付け加えて彼の“大事な存在”の名前をちらつかせれば、彼は大きく目を見開いてひどく動揺するような素振りを見せた。

どうしてそれを、とでも問い掛けるような彼の視線に確かな確信を得ながら、俺は彼の心を掌握する為に畳み掛ける。


「……違います」

「そんなに動揺してるのに?」

「違いますっ!!」

「ムキになる辺りがますます怪しいなぁ〜…」

「……っ、仮にそうだとしたら、どうするんですか?」

「そうだなぁ〜……」


動揺を隠すように必死に押し殺した声でそう尋ねる彼に、俺はわざともったいぶるような態度で言い渋る。
そして、彼の気を充分に惹きつけたことを確認してから、俺は明るい声で告げた。


「殺そうかな」

「………え?」


ぴたり。一瞬にしてゴールドの周りの時間が止まったように、彼の身体は俺の一言で見事に固まった。
そしてようやく俺の言ったことが理解できた彼は、さっと顔から血の気を引かせ唇を戦慄かせながら確かめるように呟いた。


「嘘……。冗談で、」

「本気だぜ?だって、」


そこで言葉を切り、俺はゴールドに視線を合わせる為に屈み込んで、今度は彼の顎を掴み目線を逸らされるぬようにする。
視線を合わせて見つめた彼の顔は、俺の発した言葉に怯えているのだろうか。未だに唇が戦慄いたまま、俺の次の言葉を待っている。
そんな彼に俺は最後の仕上げと称して、低く冷たい響きを持たせた声で彼を絶望の底に“優しく”落とした。


「ゴールドがいつまで経っても俺のモノにならないから、さ」

「止めて……、止めて下さい…」

「ゴールドが俺のモノになるなら考える」

「……っ!そんな…っ!!」

「あっそ。なら今から行って来ようかな…」

「分りましたっ!! ………分りました、から、……殺さ、ないで……っ」

「素直でよろしい」


立ち上がり行動を起こそうとする俺の服の裾を必死に掴み、ゴールドは蚊の鳴くようなか細い声で懇願した。
俺はそのゴールドの言葉にどす黒い心が満たされていくのを感じながら彼へと向き直り、泣いているのだろうか、肩を震わせる彼の頭を暖かい手で撫でた。


「ゴールドも俺のこと好きでいてくれるんだな。嬉しいなぁ」

「……レッド、さ」

「お前が俺のこと好きなら、ほら。愛する恋人にキスの一つくらい出来なきゃなダメだよな?」

「あなた、は………っ」

「ほら、ゴールド」

「…っ、………っ、…………ん、」


嬉しくて嬉しくて彼の頭を撫でたままようやく結ばれたことに対して笑顔を浮かべると、彼は今度こそこの世の終わりのような顔をして俺の顔を見た。
けれど、今の俺にはその顔を見ても罪悪感なんて欠片も湧いてこない。
だって、ようやく意中の彼を手に入れることが出来たのだから!


結ばれたのなら誓いのキスを。


そう彼にせがめば、彼は何かを諦めたようにぎゅっと目を閉じた後、俺の唇へと自分のソレを重ねた。
その暖かい唇を受け止めるのと同時に、彼が今流しているであろう涙の塩辛い味が口腔に広がるが、その味でさえも愛しくて俺は彼が逃げないように、そして逃がさぬように強く抱き締めて、彼の口腔を暴き舌を絡ませ合う。

時折漏れる彼のくぐもった嬌声と荒い息遣いが下腹を刺激して、俺はキスをしたまま彼をその場へ押し倒した。
それでも彼の唇を貪ることを止めず、俺はキスをしたまま彼の服を少しずつ脱がしていく。


「喜べよ、ゴールド。今日が俺達が結ばれて初めて身体を重ねる日だ。……今までは激しくしてきたけど、大丈夫、今日からはお前が痛くないようにするから、な?」

「……は……い」


そうして見えた彼の鎖骨に口付けを一つ落として、俺は彼の身体に覆い被さった。



(Dedicato alla amore traboccante)



器から零れた愛は、土に触れて黒く澱んだ