▼11月
高尾×しょたりま
「高尾は、好きな人……いないのか?」
パソコンに向かって仕事をしている俺に、真ちゃんがラッキーアイテムであるウサギのぬいぐるみを抱きながら上目使いでそう聞いてきた。
俺は一瞬目を見開いて真ちゃんを見た後顎に手を当てて、あーと唸る。
好きな人、とはどういう意味の好きな人なのだろうか。Like?Love?
Likeのほうで言うなら真ちゃんのお母さん、つまり姉さんや孝太郎さんは好きの部類に入るだろう。ああ、俺の担当編集者も好きかな。あと、黒子先生とか。
まあきっと、真ちゃんの言う“好きな人”はLoveのほうなんだろうと思うけど。
「……なんで?」
「別に、気になっただけなのだよ」
「ちょっとー、ちゃんと理由聞かせてよ」
真ちゃんはぎゅうっとぬいぐるみを抱きしめて、ぬいぐるみのせいで半分しか見えてない真ちゃんの顔が真っ赤に染まった。
「……たかおは、ずっと俺とばっかりいるから、好きな人がいるならほったらかしにしたら…駄目なのだよ」
…………真ちゃんきゃわわわわわわわわっ。
ほったらかしにしたら駄目なのだよとか犯罪級の可愛さなんですけど!?
ていうか小学生のくせにちゃんと色んな事考えちゃって…おませさんだな、今時の小学生。
「んー、大丈夫。ほったらかしにしてないし。むしろいつも一緒にいるから」
俺が笑って真ちゃんの頭を撫でてやると、さらに可愛らしくぷくっとほっぺたが膨れた。
あり?なんで?
「毎日会ってるなんて、は、はれんちなのだよ!」
「ぶはっ」
破廉恥……っ!真ちゃんの可愛い口から破廉恥なんて言葉出るのが破廉恥!
ていうか俺は真ちゃんと一緒にいるからっていう意味だったんだけど。伝わってない!
そこが可愛い!
「真ちゃんさ、俺が出かけてるの見たことある?」
「俺と一緒に買い物に出かけてるのだよ」
「それ以外は?」
「……ないのだよ」
「でしょ?真ちゃん頭いいんだから、ちゃんと考えて?」
むうっとした表情を見せる真ちゃん。
子供に自分で考えろ、は難しかったかな。
「今の俺の好きな人は、真ちゃんかな」
「……っ!」
「じゃないと、あんなことしないしね?」
耳元で囁けば、真ちゃんはきゅっと目を瞑る。
はー、もう可愛い。仕草とか反応がいちいち可愛いんだから。
もしかしたら真ちゃんは俺を殺す気かもしれない。
「ぉ、俺も、」
真ちゃんが抱きしめていたぬいぐるみを離して、俺の首に腕を回す。
ふわりと香ったシャンプーの匂いが、同じものを使っているのになぜかそれに欲情した。
「高尾が、好き……なのだよ!」
「……そっか」
抱き着いてきた真ちゃんの白い首筋に、俺はがぶりと噛みついた。
:好きな人
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