黒子のバスケ | ナノ






あい【愛】
@かわいがること。たいせつにする。
◎愛情/慈愛/博愛
Aそばにいたいと思う。
◎恋愛
B相手のしあわせのためにつくそうとするあたたかい気持ち。
◎「親の――」
C恋したう気持ち。
◎「男女の――」

辞書に書いてある愛っていうものは、どうやらこういうことらしい。
高校に入学してから初めて自分の机の上にある辞書を手に取ってみた。

恋が愛にかわる瞬間って、どんな時なわけ。



 ◆


「真ちゃーん。帰ろ!」

「ああ」


俺と肩を並べて(実際並べてない。背的な意味で)歩くこの男、緑間真太郎はとてつもなく変な奴だ。

運命論を語るくせに、愛を信じない。
彼曰く、両親にほったらかしにされて親の愛情というものを知らないらしい。多忙な両親は今もすれ違い生活で、家族が揃うことは滅多にないとか。
今住んでいる家も、ほとんど真ちゃん一人で住んでいるようなものだ。
かくいう俺も真ちゃんの親には会ったことが無い。

真ちゃんの家に行くと必ず見るのは、たくさんの医学書とたくさんの表彰状。
真ちゃんの両親がどんな仕事をしているのかは大体分かる。

愛なんて信じない

そう言った真ちゃんにこう聞いたことがある。

『もし真ちゃんの運命の人が“あなたを愛してる”って言ったら真ちゃんはそれにこたえないの?』って。

そしたら真ちゃんはこう言った。

『愛など、目に見えない感情なのだよ。ただそういう言葉を知っている、それだけ。愛など幻想にすぎないのだよ』

その時はふーんなどと返したが、今になって思えば真ちゃんが語る運命論も目には見えないじゃん。なんて。


「こちら温めますか?」

「おねがいしまーす」


小腹がすいたのでコンビニで調理パンを買う俺と真ちゃん。
温められたそれを持って、寒くて人気のない公園まで赴いた。


「真ちゃん真ちゃん」

「なんだ」

「あたためますかっ?」

「はあ?」


俺がおいで、という意味で腕を伸ばしたが真ちゃんにあっさり拒否された。
……冷え性な真ちゃんをあっためてあげようと思ったのに。

ツンデレなんだからー、とからかいながらベンチに腰を下ろす。
すとん、と真ちゃんがその隣へ座ってきた。


「……俺さぁ、真ちゃんとこういう風に寄り道すんの結構好き」

「そうか」

「うん。バスケしてるときが一番好きだけど、こうやって何でもない日に二人でいるっていうのもすっげえ貴重って思わね?」

「お前とは、いつも一緒にいるだろう」

「うーん、そういうんじゃなくって……まあいいや、今のところは」


――ぶっちゃけ、真ちゃんに俺の気持ちはもう伝えてある。
好きだよ、本気で。毎日毎日伝えているけど、真ちゃんは信じてくれない。
信じようとしてくれない。

自惚れかもしれないけど、少なくとも真ちゃんは俺の事を嫌ってはいない。だからといって好きとも限らないけど。

友達の好き、にほんのちょっとだけ恋愛対象としての好きが混じっているような気が……しなくもない。

真ちゃんに、覚悟決めろよとかお前の気持ちはどうなのとか、そういうのは言わない。
だって真ちゃんが大切だから。真ちゃんが嫌がることはしたくない。


「……俺は、愛というものがよく分からん。お前の言う好きも、目に見えない“感情”は苦手だ」

「知ってるよ」

「恋やら愛やら、言い方が違うだけで所詮同じ幻想の言葉なのだよ」

「――ちょっとだけ違うよ、真ちゃん」


寒さで指が思うように動かないのかおしるこ缶を上手く開けられない真ちゃんからそれを奪って代わりに開けてやる。

俺から缶を受け取った真ちゃんが怪訝とした顔で俺を見ていた。


「“恋”はひとりでも出来るけど“愛”はふたりじゃないと出来ないことだよ」


恋する、はひとり。
愛し合う・愛するはふたりじゃないと意味がない。

恋が愛に変わる瞬間って二人の想いが通じ合ったときなんじゃねえかなって俺は思う。


「高尾は俺に……“恋”してる…?」

「うん。もうずっと一人で真ちゃんに恋してる」

「高尾は俺に、“愛”を教えてくれる……?」


あい【愛】
ふたりじゃないとなしえないもの。
◎愛し合う



:二人じゃないと意味がない

ろな様からのリクエスト、緑間が大切な高尾と愛を知らない緑間、でした。
なんだか想像とチガウ……
こんな感じでよかったのか…!?
書き直しなど受け付けますので!!今回はとても素敵なリクエストありがとうございました!!







二人じゃないと意味がない



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