黒子のバスケ | ナノ




いい話じゃありません。






目を開ければ、そこは血の海だった。
緑色の黒板にも、白い壁にも、木製の教卓にもべっとりと赤い液体がついている。
周りを見ればクラスメイトだった者たちが目を見開いて、口から血を流して死んでいた。
見開かれた目にぞっとして背けても、なぜがどの死体とも目が合ってしまう。
360度どこを見ても。どこを見ても。

「……っ高尾」

多すぎる死体を見まわしていつも隣にいてくれたあいつの姿を探す。
一通り見まわしたところで、高尾の姿は確認できなかった。
俺は窓の外を見るとグラウンドにもちらほらと死体がある。
何なんだ。俺が意識を失っているうちに、この学校で一体何が起こったというのだろうか。
俺は席から立ち上がり、血で滑りそうな床を慎重に歩く。
赤い液体を踏んで歩くたび、びちゃ、ぴちゃ、と嫌な音が耳に響く。

「うっ」

やっとの思いで教室のドアを開けると、長い廊下にもたくさんの死体が転がっていた。
まじまじ仰向けになっている死体を見て分かったが、みな同様に一撃でやられている。
……これは、銃か……?
いや、まさかそんなはずはない。銃刀法違反だ。
……猟銃ならば、可能なのか…?

「……たかおっ!」

長く、どこまでも続いているような廊下に俺が高尾の名前を呼ぶ声が響き渡る。
もしかしたら、この学校で生きているのは俺だけなのか?
もしまだ犯人が学校の中に残っていたとしたら、今の俺の行動は愚かだった。
だがどうしようか……自分の命はもちろん大事だが、それと同じくらい大事な高尾の生死を確認するまで逃げられない。
いや、逃げて警察を呼ぶべきなのだろうがどうせ見つかったら俺も殺されるだろう。というか外はまだ明るいのに近所の住人には銃声が聞こえなかったのだろうか。

「ひっ……!」

ずんずんと廊下を進んでいき、体育館を目指す。開けっ放しの体育館のドアから中を覗いたら、体育館内も血の海だった。
ごろんとバスケットボールが転がっていて、その傍らには大坪さん、宮地さん、木村さんがほかのところで見た死体と同じ状態になっていた。
じり、と俺は後ずさりして走り出す。目指すのは屋上だ。

(高尾、高尾、たかお……っ)

お願いだから、お前だけでも生きててくれ。
俺を一人にしないでくれ。

「はぁ、はぁ、はぁっ」

階段を駆け上った先。屋上に続くドアノブを捻った――


 「真ちゃんっ!」


がばりと俺は起き上がる。
息が上がっている。額から汗がしたたり落ちてきた。


「もお、真ちゃんお寝坊さんだな〜」


目の前にはドアップで高尾の顔があった。
ああ、夢か。夢だったのか。


「そんなに顔を近づけるな、馬鹿尾」


ふう、と息を吐いてから目覚めたばかりでぼうっとしながら周りを見た。


「……ッ!?」


目が眩んだ。
周りに広がっていた風景が、夢と同じだったのだ。
なんで皆死んでいる?誰が?


「高尾、早く逃げ……」

「あ、あいつ生きてんじゃん」


ガチャン、と横で音がして次の瞬間鼓膜が破れるかと思うほど大きな音が間近で響いた。

ドォンッ

びちゃっと俺の顔に液体が飛んでくる。
指で拭い取ってみれば、それは血だった。


「あ、あ……っ!?」


横を向けば、高尾が銃片手に俺に微笑んでいる。
お前だったのか?お前が全部やったのか?
どうして銃なんか持っているのだよ。どうしてそんな顔で笑っているのだよ?


「っあー、やっぱショットガンて音うるさいね。何百発も撃ったけど慣れねーわ」

「た、か」

「ね、真ちゃん嬉しいっ?」


持っていたショットガンを死体の上に放り投げて、高尾は血で染まった両手で俺の頬を包んでくる。

――うまく、息ができない。


「真ちゃんのために俺みんな殺したんだよ!真ちゃんの夢の実現は難しいかなって思ったけど意外と簡単だった♪」

「な、んで」

「え?何でって真ちゃんが望んだんでしょ?この頃毎日見る夢のこと話してくれたじゃん。だから俺は真ちゃんのために全校生徒殺してあげたよ?」

「そんな、」

「だってさ、夢は願望の表れって言うじゃん。俺が叶えてあげたんだよ、真ちゃんの願望を!」


絶句した。
後悔しても遅い。

だって高尾の目には、俺しか映っていないのだから。


「真ちゃん。一緒に死んでなんて言わないよ?真ちゃんは一生俺と一緒にいてくれればいいんだから」


ちゅう、と高尾が涙を流す俺の額にキスをした。
俺はもう何もかもがどうでもよくなって、既になるようになれ、どうにでもなれと自暴自棄になっている。


「真ちゃんの世界には俺だけでいいんだよ」


さあ、二人だけで遠くに行こう


そう言って高尾は俺と手を繋いだ。




:夢はなんとかの表れって、

反省はしていますが後悔はしていません。







夢はなんとかの表れって、



back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -